奥歯1本のインプラント治療の費用相場とは?内訳と高額な理由・費用を抑える方法
2025.09.08
自分の歯を失った際に、人工歯を入れるための治療法は複数あります。その中でも、メリットの多いインプラントを検討している人が年々増えているようです。
しかし、「インプラントは高額」と聞いて治療を迷われている方も多く見受けられます。
確かにインプラントはブリッジや入れ歯と違って保険が適用されない治療法のため、費用はそれらに比べてかなり上がります。
「かなり上がる」というのは、例えば奥歯1本をインプラントにする場合、実際にどれくらいの金額なのでしょうか。その内訳や理由をご説明するとともに、費用を抑えるためのポイントもお伝えしていきたいと思います。
そもそもインプラント治療とは
まずインプラント治療について詳しくご説明します。
インプラントは「インプラント体」と呼ばれる人工歯根を顎の骨に埋め込んで人工歯を固定する治療法のことです。
虫歯が神経の奥深くまで進行してしまったり、歯の根に至るまでの深いヒビが入ってしまった場合、抜歯となります。
抜歯した後の欠損箇所には人工歯を入れることになりますが、インプラント以外の治療法ですと、欠損箇所の両隣の歯を支えにして人工歯を置きます。
あくまで「置いている」だけの状態のため、自分の歯のような咀嚼力には戻らないのが欠点と言えます。
人工のものではありますが、唯一インプラントだけが歯根を作れる治療法となるため、咀嚼力、耐久性などの面において大きなメリットがあります。
特に奥歯は物を噛む際に強い力がかかりますし、食べ物を噛み砕く、すりつぶす等の役割を担っているため、咀嚼力が弱いと不便を感じやすい箇所です。
インプラントは金属の人工歯根が埋まっていてしっかり人工歯が固定されているので、天然歯に近い咀嚼力を再現できる画期的な治療法となります。
奥歯1本のインプラント治療の費用相場はどれくらい?
メリットも多いインプラントではありますが、デメリットも存在します。その中でも最も悩ましいのがやはり「費用」ではないでしょうか。
奥歯1本をインプラントにする場合、相場として約30~50万円が一般的です。
金額に開きがあるのは、インプラントは保険が適用されない「自由診療」になりますので、治療価格は各歯科医院が自由に設定できることがまず挙げられます。
加えて、歯科医院の規模、設備、スタッフの人数、立地、使用している部品などもそれぞれ違い、患者様の口腔状態によっても処置内容が変わってくるので、治療費に差が生まれます。
ちなみに、前歯のインプラントの費用も奥歯とあまり変わりません。ただし、奥歯よりも骨が薄いため、奥歯の治療よりも高い技術が求められます。
奥歯1本のインプラント治療にかかる費用の内訳
奥歯を1本インプラントにする場合、主な費用明細は以下のようなものになります。
- レントゲン撮影:5,000円〜1万円
- CT撮影:1万円〜3万円
- 診断費用、治療計画の策定費用など:5,000円〜2万円
- 単純抜歯:5,000円〜8,000円
- 複雑抜歯(歯の一部が歯茎に埋没している場合):1万円〜3万円
- 埋伏歯抜歯(歯が骨の中に埋没しており、骨を削らないと抜けない場合):3万円〜8万円
- インプラント体(人工歯根)の費用:10万円〜25万円
- アバットメント(インプラント体と人工歯をつなぐ支台):3万円〜8万円
- 手術費用など:5万円〜10万円
- 骨の量を増やす手術(骨造成):5万円〜20万円
- 骨を持ち上げる手術(サイナスリフト):10万円〜30万円
- プラスチック製の仮歯:5,000円〜1万円
- 金属製の仮歯:1万円〜2万円
- 人工歯:10万円~20万円
※患者様の口腔状況により変動します
関連記事:インプラントのメンテナンスにかかる費用とは?相場や必要性も解説
検査・診断料
一般的な歯科治療には主にレントゲン検査を用いて歯根の形状などを確認します。
インプラントは顎の骨の内部をもっと精密に調べる必要があるため、レントゲンに加えてCT検査を行う歯科医院がほとんどです。
インプラント体が埋められるだけのスペースや骨密度があるか、周囲の歯や神経などと接触せずに埋めるにはどの大きさの部品を使って、どの方向で埋めればいいか、などを判断する目的です。
手術費用
インプラント費用の大部分を占めるのが、手術に関するものです。インプラントは歯茎を切開して顎の骨を削るという大がかりな外科手術を伴います。
抜歯、インプラント体の埋入、アバットメントの装着、という3段階を経て手術を行うのが一般的ですが、これも患者様の状態やご要望によって手術内容が多少変わります。
人工歯の費用
入れ歯やブリッジと違って保険が適用されないインプラント治療は、人工歯の素材も保険適用外となりますので、お好きな素材をお選びいただくことができます。
ほとんどの方が選ばれるのはセラミックで、審美性・機能性ともに非常に優秀な素材です。セラミック以外にも、患者様のご要望に合わせて様々な素材を選ぶことが可能です。
そのため、人工歯にかかる費用にもバラつきが生まれます。
関連記事:インプラントの素材の種類とは?パーツ別に各素材のメリット・デメリットを紹介します
骨造成が必要な場合は追加費用が発生する
一般的なインプラント治療では抜歯のあとにインプラント体の埋入手術となりますが、インプラント体を埋め込めるだけの骨量が無いと判明した場合は、「骨造成」と呼ばれる追加の処置が必要となります。
骨造成手術にはいろいろな種類があり、それぞれに費用も異なります。患者様によっては、このような追加費用が発生する可能性もあることを事前に知っておきましょう。
インプラント以外の奥歯1本のおもな治療方法と費用
インプラントはメリットの多い治療法ではありますが、「インプラントが絶対的におすすめ」というわけではありません。
「1本あたり約30~50万円」というのは誰でも簡単に出せる金額ではありませんし、収支のバランスを考えずにインプラント手術を受け、生活を圧迫してしまってはいけません。
また、骨の状態やご年齢・持病などによってインプラント手術へのリスクが高く、他の治療法をおすすめする場合もあります。
抜歯した後に人工歯を入れる他の方法として、ブリッジと入れ歯が代表的な治療法です。
ブリッジ
ブリッジは、欠損した両隣の歯を削って土台にして、橋渡しのように人工歯を入れる方法です。
メリットは、保険が適用されるので費用が2~3万円ほどで済むこと、治療期間が約1~3ヶ月の短期間で終わること、人工歯を保険適用外のものにすれば天然歯のように見えることです。
一方で、「虫歯でもない両隣の歯を削る」ことは大きなデメリットと言えます。何もしなければ健康なままでいられたかもしれないのに、削って被せ物をしたばかりに隙間から菌が侵入して結局両隣の歯も虫歯に……というケースも少なくありません。
入れ歯
ブリッジよりも両隣の歯に負荷がかからない方法が、入れ歯です。金属製のフックを両隣の歯に引っかけて人工歯を固定します。
費用は5,000円~2万円ほどになります。治療期間はブリッジと同じくらいで、約1~3ヶ月です。
入れ歯は簡単に取り外しができますので、洗浄剤で隅々まで掃除できることも利点ですが、だからこそ「外れやすい」「ズレてしまう」ことがウィークポイントと言えます。
そのせいでフックが歯茎に当たって痛みを感じたり、両隣の歯を傷つけてしまうこともあります。においや着色汚れがつきやすいことも欠点と言えます。
奥歯1本のインプラント治療の費用が高額になる理由
ブリッジ・入れ歯と比べて費用が大きく上がるインプラント。なぜこんなにも差が出てしまうのでしょうか。
保険適用外の自由診療となるため
まず第一に、「保険適用外」が最も大きな要因です。
日本は医療保険制度が確立されているため、ほとんどの診療費は国が7割~9割を負担してくれます。そのために私たちは医療機関の受付に「保険証」を提出しています。
しかし、インプラントに関しては、他にブリッジ・入れ歯という治療法があることと、健康を維持する面よりも審美面が強いことから「保険適用外」となっていて、全額自己負担となります。
事故などで歯を大きく欠損した場合など、ごく一部のケースに保険が適用されることがありますが、ほとんどの場合は自由診療となります。
関連記事: インプラントは保険適用になる?健康保険で治療を受けられる条件を解説
インプラント治療が保険適用になる3つの条件とは?費用負担を抑える方法も紹介します
高度な技術と専門知識が求められるため
全額自己負担だとしても、インプラントは治療費そのものが高額という側面もあります。
インプラントは歯科医師なら誰でも治療を行うことができますが、実際は一般的な歯科治療とは異なる知識・経験が求められます。
骨に穴を開ける大がかりな外科手術を行うための専門知識を学び、多くの経験を積む必要があります。
そのためには国内外のインプラント学会に出席して世界中の臨床データなどを学んで知見を深めなくてはいけません。
信頼のおけるインプラント専門医になるために、それらの各方面で様々な資金がかかっている背景も含まれています。
材料費がかかるため
天然歯と並んでも遜色ない見た目・機能性を満たすためには、高品質の素材が必要です。
中に埋め込むインプラント体・アバットメントはチタン製のものを使用することが多く、世界のトップメーカーが製造しているものは純度が高く安全性が高いため、材料費も高額になります。
衛生管理の行き届いた専門の設備が必要なため
先ほどお伝えしたように、インプラント治療を行う際には専門の検査を行い、一般的な歯科治療を行う椅子ではなく、専用の手術室で処置を行います。
それらの精密機器や設備を用意するにはかなりの設備投資・徹底した衛生管理が必要となり、コストがかかります。
治療期間が長期にわたるため
インプラントの治療期間は約6カ月~1年となり、通う回数も他の治療方法より多くなります。
通う回数が多ければ治療に関わる人件費なども自ずと加算されていきます。
もし骨造成などの追加処置が必要となった場合、そのぶん治療期間も長くなり、追加費用も発生します。
奥歯1本のインプラント治療にかかる費用を抑える3つの方法
自由診療であることと、様々な原価がかかっているために高額になってしまうインプラント。しかし、費用を抑える方法がいくつかありますのでご紹介します。
①医療費控除を申請する
日本には「医療費控除制度」というものがあります。1月1日~12月31日の間に支払った医療費が10万円(年収200万円未満の世帯は年収の5%)を超えた場合に、納めた税金が返金される(還付)制度のことです。これはインプラントのような自由診療の場合でもOKです。
インプラント治療はほとんどの場合が10万円を超えるため、ぜひこの制度を活用しましょう。
計算式は以下の通りです。
ただし、自動的に税金が戻ってくるのではなく、この制度を利用したい年度はご自身で確定申告を行う必要がありますので、ご注意ください。
関連記事:インプラント治療は医療費控除の対象?還付金の計算・申請方法・注意点も解説
②デンタルローンを利用する
支払額が安くなるわけではありませんが、分割して支払う方法も選べます。
歯科医院によって、治療費の支払い方法は様々です。現金とクレジットカードのみが使用できる歯科医院が多いようですが、高額なインプラント費用を一括ではなく分割にしようと思うと、クレジットカードで分割払いを選択することになります。しかし、クレジットカードの分割払いには分割手数料や金利が発生します。
一部の歯科医院になってしまいますが、中には「デンタルローン」を取り扱っている歯科医院があります。デンタルローンとは、金融機関に一旦費用を立て替えてもらい、患者様はその金融機関に分割で返済していくという商品になります。
住宅ローンなどと同じように審査がありますが、クレジットカードでの分割払いよりも低金利の商品が多いのが特長です。
取り扱っている歯科医院があまり多くありませんので、事前に問い合わせてみるといいでしょう。
また、「院内分割」という制度を採り入れている歯科医院もあります。こちらは金融機関を通さずに、治療を受けた歯科医院に直接支払っていく制度です。院内分割をご利用いただくには歯科医院が設定した条件に合致している必要がありますが、金利がかからないことが多いのでおすすめです。
本町通りデンタルクリニックでも院内分割制度がございますので、ぜひご相談ください。
③信頼できる歯科医院を選ぶ
1本数十万円もするインプラントですので、「少しでも安いところで」と考えるのは当然のことです。
しかし、「とにかくいちばん安いところで」という基準で決めてしまうと、結果的に高い買い物になってしまうことがあります。
先ほどご説明したように、インプラントが高額になってしまうにはそれなりの理由があります。体の中に埋める部品が「安かろう悪かろう」でいいわけがありませんし、経験の少ない歯科医師だったゆえに麻痺や痛みが残り続ける可能性もあります。
そしてそれらのミスをカバーするために、追加費用を請求されることも考えられます。
また、保証制度などが無く、治療後に不具合を感じて診察を受ける度に治療費を請求されることもあります。
そのような事態にならないよう、事前に「信頼できる歯科医院」をしっかりと見極めておくことが最も重要となります。
治療に入る前の問い合わせやヒアリングの時点で、インプラントに関するメリット・デメリットの両方を分かりやすく説明してくれるかどうか、明確な見積書を出してくれるかどうかなど、複数の歯科医院を訪れて、院内の様子も含めて比較することをおすすめします。
関連記事:インプラント専門医・歯科医院の選び方とは?押さえておきたいポイント11選を徹底解説
インプラントってなぜ高額なの?その理由と信頼できるクリニックの選び方
まとめ
奥歯1本をインプラントにする場合は、約30~50万円が相場になることをお伝えしました。
費用面のみではなく、患者様のご年齢や体の状態などによって、適切な治療方法は変わってきます。どの治療方法にもメリット・デメリットがありますので、歯科医師とよく相談してベストな選択をしましょう。
もしインプラントにする場合、やはり大きなネックとなるのは治療費です。医療費控除制度なども考慮しつつ、無理のない支払いが可能かどうか、歯科医院で取り扱っている支払い方法と照らし合わせて検討してみてください。
そしてなによりいちばん大切なのは、「どんな歯科医院でインプラント治療を受けるか」です。
技術力、対応力、コストパフォーマンス、立地など、多角的な視点で比較することが重要です。本町通りデンタルクリニックでも随時お問い合わせに対応しておりますので、お気軽にご相談ください。