インプラントは保険適用になる?健康保険で治療を受けられる条件を解説
2025.02.03
インプラントは、入れ歯やブリッジに比べてメリットの多い治療法です。しかし、インプラント治療を検討する際にハードルとなるのが、「治療費」ではないでしょうか。
多くの場合、インプラントは保険が適用されない自由診療となるため、保険適用の入れ歯やブリッジに比べて治療費が高額になります。ただし、条件によっては、インプラント治療でも保険を適用することが可能です。
本記事では、どのようなケースでインプラント治療に保険が適用されるのかを解説します。また、自由診療の際に治療費を軽減できるポイントもご紹介しますので、ぜひご覧ください。
インプラント治療は保険適用の対象になる?
インプラント治療とは、失った歯の機能を回復させるために行う治療法のひとつです。顎の骨に穴を開けて金属製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、そこにジルコニアなどの素材でつくった人工歯を被せます。
差し歯と何が違うのか、疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、差し歯は自分の歯根が残っている部分に人工歯を差し込む治療法です。
インプラントは下記の図のとおり、歯根も人工となるため、虫歯が歯根にまで達してしまった場合や歯が根元から折れた場合、歯に深いヒビが入った場合など、歯の修復が不可能なケースに対応できます。
インプラント治療は原則自由診療
基本的に、インプラント治療は保険の適用外となるため、自由診療となります。そのため、自分の歯根を失った場合に保険適用内で受けられる治療法は、入れ歯かブリッジのほぼ2択と言えるでしょう。
ただし、インプラント治療を受ける患者様が、すべて自由診療になるわけではありません。詳しくは後述しますが、一部のケースでは保険が適用されることがあります。
保険診療と自由診療の違い
まずは、保険診療と自由診療の違いについて確認しましょう。
保険診療とは、公的医療保険の加入者が受けられる制度や診療を指し、加入者が医療機関で保険証を提示すれば医療費の自己負担額が1~3割に抑えられます。日本では、基本的にほとんどの人が健康保険証を持っていますので、一般的な病気やケガで病院にかかった際に治療費を全額支払うことはないはずです。これは歯科治療でも同じであり、多くの治療が保険適用となります。
一方の自由診療とは、厚生労働省の承認を受けていない治療や美容を目的とした治療など、上記の保険診療の対象とならない診療を指します。インプラント治療が基本的に自由診療とされているのは、入れ歯やブリッジと比較して「審美性を求めるもの」とされているからです。同じく、美容目的という理由で、入れ歯やブリッジ、差し歯に使う義歯を天然歯の見た目に近いセラミック製などに指定する場合も、自由診療となります。
その他、高度な技術・手術を要する治療をした場合や、インプラント治療において患者様の希望で局所麻酔ではなく鎮静剤を使う場合なども保険適用になりません。
将来インプラント治療が保険適用になる可能性はある?
冒頭で触れたように、条件によっては、インプラント治療でも保険が適用される可能性があります。
しかし、将来的にインプラント治療の保険適用範囲が広がる可能性は、高くないと考えられるでしょう。その理由としては、インプラント治療には審美目的の側面があること、入れ歯やブリッジなど、自分の歯根を失った場合の治療法が他にもあることが挙げられます。
インプラント治療で保険適用になるケース
それでは、基本的には自由診療となるインプラント治療が、保険適用となるケースを見ていきましょう。
先天性の疾患による治療
虫歯の悪化などで歯根を失ったのではなく、先天的な理由がある場合には保険が適用されることがあります。具体的には、以下のような場合です。
- 生まれつき顎の骨の3分の1が欠損している
- 生まれつき顎の骨に形成不全が見られる
- 骨移植を行い、顎の骨を再建している
ただし、先天的な理由だとしても保険適用となるかどうかはケースバイケースですので、専門医への相談が必要です。
病気・事故など後天的な要因によるもの
次のように、病気や事故によって顎の骨を損傷したり、広範囲に歯を失ったりした場合にも、保険適用となることがあります。
- 腫瘍などで手術を受け、下顎を切除した
- 顎骨全体の3分の1以上が連続して欠損している
保険適用になる条件を満たした医療施設で治療を受けること
たとえ、上記のように先天的・後天的な要因があったとしても、次のような条件を満たしている施設で治療を受けなければ、保険は適用されません。インプラント治療を行っているすべての歯科医院で、保険が使えるというわけではないので注意しましょう。
- 歯科または歯科口腔外科を標榜している医療機関である
- 入院用ベッドの数が20床以上ある
- 夜間や休日も対応できる当直体制が整備されている
- 医薬品や医療機器などの安全確保・管理体制が整備されている
- インプラント治療経験3年以上、もしくは歯科・口腔外科で5年以上の経験を持つ常勤の歯科医師が2名以上配置されている
地域に根ざしている一般的な歯科医院で、これらの条件をすべて満たしているところはそうそうないと思われます。そのため、保険適用でインプラント治療を受けるには、大学病院などの大きな病院にかかることになるでしょう。
インプラント治療にかかる費用の目安
保険適用でインプラント治療を受けることはかなりレアなケースとなり、ほとんどの方は自由診療となります。そのため、ここでは自由診療でインプラント治療を受けた場合の費用目安をご紹介します。
インプラントの費用相場
インプラントの相場は、1本あたり約30万円~40万円と言われています。ただし、インプラントは保険適用の治療と異なり、各歯科医院が自由に価格を設定できますので、「費用は歯科医院によって異なる」と考えておきましょう。
また、病院の設備やインプラントの種類、治療内容によっても費用は変動します。例えば、インプラントを埋めるには顎の骨の量が足りない場合、骨造成手術などを行うケースがあります。医師によってそのあたりの見立ても変わりますので、費用は歯科医院や患者様ごとに変わります。
インプラント治療の費用が高額になりやすい理由
インプラント治療の費用が高額になる理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 保険が適用できない自由診療だから
- 専門的な知識と高度な技術を要するから
- インプラント本体や人工歯が高額だから
- 治療が完了するまでに長い期間を要するから(約3ヶ月~10ヶ月)
- 専門の設備・環境が必要だから
インプラント治療の費用負担を軽減するための4つのポイント
自由診療でも、費用を軽減するコツはあります。これを知っているのと知らないのとでは数万円もの差が出ることもあるため、ぜひ知っておいてください。
医療費控除を活用する
医療費控除とは、1月1日~12月31日の1年間で支払った医療費が10万円を超えた場合、もしくは総所得額200万円以下の方はその5%を超えた場合に、納めた所得税が戻ってくる(還付される)可能性がある制度です。
インプラントは1本あたり30万円~40万円が相場ですので、「1年間で10万円以上」のハードルを軽く越えます。直接的な治療費以外に、検査費用や通院時の交通費なども含まれますので、インプラント治療を受けた方の多くは医療費控除が活用できる可能性があります。これは納税者ご本人のみの金額ではなく、生計を共にするご家族の分も含むことが可能です。
ただし、自動的に還付されるわけではなく、確定申告が必要になりますのでご注意ください。確定申告は、原則としてその年の翌年の2月16日~3月15日に行いますが、給与所得者が医療費控除の還付申請を行う場合は5年間の猶予が設けられています。そのため「4年前にインプラント治療を受けたけど、医療費控除の申請をしていなかった!」という場合でも、さかのぼって申請することが可能です。
高額療養費制度を活用する
高額療養費制度とは、その月に支払った医療費が一定額を超えた場合、国民健康保険や勤務先企業が加入している健康保険組合などに申請することで、一部の金額が戻ってくる制度です。どれくらい払い戻しが受けられるかは、その健康保険組合の規定や年齢などによって変動します。
ただし、この制度が適用されるのは「保険適用内」の治療を受けた場合です。インプラントのような自由診療には適用されませんので、活用できるケースはあまりないでしょう。
デンタルローンを活用する
インプラント治療の費用は高額になる傾向にあるため、中にはローン支払いが可能な歯科医院もあります。
ただし、デンタルローンは治療費を減らすわけではなく、支払いを分割する仕組みです。分割することで利息が加算されますので、ご注意ください。
なお、デンタルローンを利用して治療費を支払った場合でも、先述した医療費控除が受けられます(利息分は除く)。
複数の歯科医院で相見積もりを取る
先ほどお伝えしたように、インプラント治療にかかる費用は、各歯科医院によって異なります。各歯科医院の治療費を比較するために、複数のクリニックに問い合わせをして相見積もりを取ることもおすすめです。
その際には、金額だけではなく、治療方針や患者様への対応、アフターフォローの体制、設備環境などもしっかりチェックしましょう。「いちばん安かったから」という理由だけで歯科医院を選んでしまうと、何らかのトラブルが発生することになりかねません。
相見積もりを取るだけでなく、インターネットでクチコミや評判もしっかりチェックして、慎重にクリニックを選ぶことが重要です。信頼できる歯科医院や歯科医師かどうか、後悔のないように慎重に選びましょう。
まとめ
本記事では、インプラント治療のほとんどが保険適用されず、自由診療となる理由を説明しました。
インプラントは気軽に受けられる治療ではありませんが、国の制度を上手に使えば少しでも負担が軽減される可能性があります。
また、複数の歯科医院の比較をしてみると、良心的な金額で治療を行っているところを探せるでしょう。
口内環境は、結果的に生活の質にもつながります。金額や医師の技術・対応、歯科医院の設備など、複数の側面でじっくり時間をかけて比較してみて、「ここなら信頼できる」と思えるところをぜひ見つけてください。
「インプラント治療を受けたいけど費用が……」とお悩みの方は、ぜひ本町通りデンタルクリニックにご相談ください。患者様それぞれが、無理のないお支払い計画で安心して治療を受けられるよう、複数のお支払い方法をご用意しております。医療費控除の適用範囲に関するご質問も受けておりますので、ぜひお気軽にお声がけください。