インプラントとセラミックの違いとは?治療方法・費用・素材を解説
2025.07.09
自分の歯と見分けがつきにくいほど、見た目の満足度が高いインプラント。一方で「セラミック治療」と呼ばれる治療法も、インプラントと同じように審美性の高さが人気です。
虫歯や欠損などで自分の歯を失って人工歯を入れることになった際、インプラントとセラミック治療、どちらが適しているのでしょうか?
インプラントとセラミック治療の違いの詳細と、費用などの比較をお伝えしていきます。
インプラントとセラミックにおける治療方法の違い
まず、インプラントとセラミック治療の違いからご説明していきます。
インプラント治療の特徴
インプラントとは、「人工歯根」を埋める手術をする治療のことです。
虫歯が根本付近まで進行していたり、歯の根にヒビが入ってしまったりした場合、抜歯となります。抜歯をしたあと、人工歯を入れる方法は主に3種類あり、多くの場合は保険が適用となるブリッジか、入れ歯を選択します。
しかし、ブリッジや入れ歯はデメリットも多く、歯茎の上に人工歯を置いているだけの状態になるので、咀嚼力が低いことが主な欠点となります。
インプラントは、ブリッジ・入れ歯と違い、天然歯と同じように顎の骨に歯根が繋がっていることにより人工歯がしっかりと固定されていますので、自分の歯と変わらない咀嚼力が実現できます。
つまり、インプラントは基本的に「歯根が無い状況」のときに選択肢として挙がる治療法になります。
セラミック治療の特徴
セラミック治療とは、「歯根が残っている状況」のときに選択する治療法になります。
虫歯ができた箇所を削り取り、削った部分を補うために多くの人が「銀歯」や「硬質プラスチック(レジン)」を選択します。この2種類は保険が適用されるため、安価な治療費で済むからです。
しかし、銀歯はどうしても目立ちますし、硬質プラスチックも透明性が無く、前歯だと特に義歯であることは明確なので、天然歯と並んだ時に違和感があります。
そこで、保険適用外の選択肢である「セラミック」を選択すると、天然歯と見分けがつかないほどの審美性の高さが得られます。
インプラントは「歯根が無い場合」。セラミック治療は「歯根が残っている場合」という点が最も大きな違いになります。
また、インプラントは歯茎を切開して顎の骨を削る手術を伴いますが、セラミック治療は手術をしないことも相違点です。
インプラント治療とセラミック治療の費用
インプラントとセラミック、どちらも共通しているのは「保険適用外」であることです。
私たちが医療機関で診療を受ける際、会計で支払う診療費は1~3割の自己負担で済んでいます。これは国民健康保険や社会保険に加入していて、受付で「保険証」を提示しているからです。
インプラントとセラミックはこの保険が適用されないため、全額が自己負担となります。
関連記事:インプラントは保険適用になる?健康保険で治療を受けられる条件を解説
相場として、インプラントは1本あたり30~50万円程度と言われており、セラミックは使用する容量や素材などによって左右されますが、1本あたり5~15万円程度となります。
関連記事:インプラントの相場はいくら?費用の内訳と安く抑えるポイントも紹介
インプラント治療とセラミック治療に用いる素材
インプラントとセラミック、どちらもその審美性の高さが大きなメリットですが、使用される素材にはいくつか種類があります。
体質や生活環境、噛み癖などによって歯科医師と相談の上、選択するといいでしょう。
インプラント体と人工歯で用いる素材
インプラント治療では、骨の中に埋め込まれるインプラント体とアバットメントはチタン製がほとんどです。
チタンは磁気の無い金属なので、金属アレルギーが発症しにくく、様々な手術で使用されている生体親和性の高い素材です。
関連記事:インプラントがあるとMRIは受けられない?検査前に知っておきたい安全性と対策
しかし、中には「金属アレルギーを持っているので、不安がある」という方もいらっしゃいます。そのような方には「ジルコニアインプラント」という素材があります。ジルコニアは金属ではありませんので、金属アレルギーが発症する可能性はありません。
ただし、日本国内でジルコニアインプラントを扱っている歯科医院は限られてきます。
そしてアバットメントの上に「被せ物」として接続する人工歯にも、いろいろな種類があります。
- セラミック
- ジルコニアセラミック
- ハイブリッドセラミック
- メタルボンド
- ゴールド
それぞれに特徴や金額が違いますので、ご予算などと照らし合わせてお選びください。
関連記事:インプラントの素材の種類とは?パーツ別に各素材のメリット・デメリットを紹介します
セラミックには複数の種類がある
セラミック治療に使用される素材にも様々な種類がありますが、主に「ファインセラミック」と呼ばれるものが多く使われています。
セラミック治療では、削ったところだけを部分的に埋める「詰め物」と、自分の歯を小さくなるまで削り、その上からセラミックをすっぽり被せる「被せ物」と呼ばれる方法の2種類があります。
その他にも、歯科医院によってさまざまな技法があり、表面のみに薄いセラミックを貼り付ける方法や、粉末状のセラミックを吹き付ける方法などがあります。
セラミックを使用すると一口に言っても、どの種類のセラミックを使用するか、詰め物にするか被せ物にするかなどで、費用が変わってきます。
インプラント治療・セラミック治療のメリット・デメリット
保険適用外ではあるものの、見た目の美しさなどで評価の高いインプラントとセラミック。それらのメリット・デメリットについて比較していきたいと思います。
インプラントのメリット
- 自分の歯根が残っていなくても高い咀嚼能力を得られる
- 耐用年数は10年~15年、又はそれ以上長く使うことができる
インプラントのデメリット
- 外科手術を伴う
- 1本あたり30~50万円程度
- 治療期間は6カ月~1年程度
- 金属アレルギー反応の懸念がある
- インプラント周囲炎になるリスクがある
関連記事:インプラントの歯周病「インプラント周囲炎」とは?おもな症状や原因、予防法などを徹底解説
セラミック治療のメリット
- 手術不要
- 金属アレルギーの心配がない
- 自分の歯根を残せる
- 治療期間は2~3週間程度
セラミック治療のデメリット
- 銀歯に比べて割れやすい
- 歯ぎしり癖のある人には不向き
- 自分の歯根が残っていないと選択できない
インプラント・セラミックのどっちがいい?治療法を選ぶ基準
抜歯をしてインプラントにするか、歯根を残してセラミック治療をするか迷ったときに、治療法を選ぶ判断基準を挙げていきます。
歯根が残っているか
いちばん最初の分かれ道は、「自分の歯根が残っているか?将来的にもこのまま使っていける状態か?」です。
先ほどお伝えしたように、インプラントとセラミック治療の最も大きな違いは、自分の歯根が残っているかどうか、です。
残っていたとしても、神経深くまで虫歯が到達してしまっている場合や、歯根にヒビが入ってしまっている場合などは抜歯が必要になります。
しかし、できることなら人工歯根よりも自分の歯根を残したほうがいいので、抜歯する必要が無ければセラミック治療を選んでいただいたほうがいいでしょう。
前歯を治療するかどうか
前歯は歯茎が薄いため、一般的にインプラント手術が難しい箇所になります。もし歯科医師のほうで「インプラント体を埋められるだけのスペースがない」と判断すれば、歯根が無い場合でもブリッジ+セラミックでの治療を提案されることがあります。
金属アレルギーがあるか
インプラント治療でも、ジルコニアインプラントを使用すれば金属アレルギーを持っている人でも治療可能とお伝えしましたが、やはりジルコニアインプラントを扱っている歯科医院は非常に限られてきます。
チタンは磁気の無い金属とはいえ、手術を行ってから「やっぱりアレルギー反応が出てしまった」では遅いので、金属アレルギーを持っている人はセラミック治療のほうが無難と言えるでしょう。
まとめ
インプラント治療とセラミック治療の違いをご説明してきました。
健康な歯根が残っているのに無理に抜歯してインプラントにする必要はありません。インプラントとセラミック、どちらも高い審美性があるゆえに、混同してしまっている人が多いようです。
銀歯や硬質プラスチックなど、見た目があまり良くない詰め物・被せ物にしたくないというご要望のある方は、保険適用外にはなりますがセラミックという選択肢がある、という捉え方がいちばん分かりやすいのではないでしょうか。
インプラントもセラミックも、決して安い治療費ではありませんので、担当歯科医師とよく話し合って納得いく治療法を選びましょう。