インプラント治療はデメリットが多い?治療のリスクやメリットも併せて解説
2025.02.03
インプラントの技術が日本で定着するまでは、自分の歯を失った際に選べる治療法は入れ歯かブリッジでした。しかし、入れ歯は金具が目立ってしまう、ブリッジは両隣の健康な歯を削る必要があるなどのデメリットがあります。その点、インプラントにはどちらの悩みもなく、メリットの多い治療法のひとつと考えられるでしょう。
しかし、インプラントにもデメリットは存在します。
そこで本記事では、インプラント治療にどのようなメリットがあるのかを紹介します。併せて、インプラント治療に潜むリスクやメリットについても解説しますので、治療を検討している方は、ぜひご確認ください。
インプラント治療のデメリット
インプラント治療とは、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に「被せ物」と呼ばれる人工歯を装着する治療法のことです。歯を失った部分の機能性・審美性を回復させることが可能ですが、その一方でデメリットもいくつかあります。
ここでは、インプラント治療のデメリットを4つ紹介します。
治療費が高い
インプラント治療を検討している方にとって、まず悩みどころとなるのが費用ではないでしょうか。多くの場合、インプラント治療は保険適用外(自由診療)となりますので、保険が適用される入れ歯やブリッジと比較すると何十倍も高くなります。
歯科医院や患者様の口腔状況・体質などにもよりますが、インプラント治療は1本あたり30万円~40万円が相場と言えるでしょう。インプラントを埋めるには顎の骨量が少ないなど、追加処置や高度な技術が必要になる場合には、追加費用が発生することがあります。
さらに、インプラント治療後には定期的なメンテナンスが必要となりますので、維持費も考慮したほうがいいでしょう。
治療期間が長い
治療期間が数週間~3ヶ月程度の入れ歯やブリッジと比べ、インプラント治療の治療期間は長くなりがちです。一般的には、3~10ヶ月ほどとされていますが、長ければ1年以上かかります。
インプラント治療では、骨とインプラントの結合を待つために数ヶ月置いたり、手術を数回に分けて行ったりと、患者様の様子を見ながら丁寧に治療を進めていきます。「数回通って終わり」というわけにはいきませんので、歯科医院に通う時間を確保してコツコツ通う日々が数ヶ月~1年以上続くことを理解しておく必要があるでしょう。
手術を受けなければならない
インプラント治療では、顎の骨にインプラント体を埋め込むため、外科手術が必要になります。もちろん、麻酔をしっかり使用しますので痛みはほぼありませんが、身体的な負担がゼロというわけではありません。
また、持病を抱えていらっしゃる方や妊娠中の方などは、手術による体への負担が大きいと考えられますので、インプラント治療を受けられない場合があります。
治療後のメンテナンスが欠かせない
インプラント治療は「手術を受けたら終わり」ではなく、治療後も定期的なメンテナンスが必要です。インプラントがしっかりと固定されているか、腫れなどはないか、被せ物は破損していないか、噛み合わせに問題はないか等、歯科医師のチェックが必要です。
インプラント治療では歯茎や顎の骨に穴を開けるので、インプラント周囲に細菌が増殖してしまうと、「インプラント周囲炎」になってしまうことがあります。そのようなケースにも素早く対処できるよう、定期的なチェック・メンテナンスが欠かせません。
インプラント治療に潜むリスク6選
ここからは、インプラント治療によって起こり得るリスクを6つ解説します。
インプラント治療を検討している方は、そのリスクも十分に認識したうえで、受けるかどうかを決めることをおすすめします。
インプラント周囲炎
インプラントの周りに歯周病菌などの細菌が増殖し、歯茎や骨が感染してしまう病気を「インプラント周囲炎」と言います。
初期の段階では痛みがない場合もありますので、自分では気づきにくいでしょう。これに気付かず放置すると症状が進行して骨が溶けてしまい、インプラントがグラついたり抜けてしまったりします。
インプラント周囲炎の主な原因となるのは、歯周病菌です。歯磨きをしっかりせずに口腔内が不衛生な状態になると歯周病菌の増加につながり、インプラント周囲炎になってしまうことがあります。インプラント周囲炎を防ぐには、日頃のセルフケアと定期的な通院によるメンテナンスが重要です。
金属アレルギー
インプラント治療で使用するインプラント体は、ほとんどがチタン製です。チタンは生体親和性が高いため、体内で拒絶反応や異物反応が発生しにくく、安心して医療に使用できる素材と言えます。
しかし、稀に金属アレルギーの原因になってしまう場合があり、金属アレルギーを発症してしまうと、湿疹や発熱などの症状が出てしまいます。
インプラントの定着不良
埋めたインプラントが顎の骨にしっかり定着しないケースも、ごく稀に起こります。医師の技量不足によるものもありますが、名医と呼ばれるほど経験豊富な医師であっても、定着不良が起こる可能性はゼロではありません。
血管・神経の損傷
手術の際に、骨の中にある太い血管や神経を傷つけてしまうリスクもあります。大量出血により窒息したり血が溜まったりするなど、歯科医院で対処できる範囲を超えてしまえば、大きな病院への搬送もあり得ます。
また、神経を損傷してしまうと唇や歯茎などに麻痺が残る可能性もありますので、これらのリスクがあることもしっかりと認識しておくことが大切です。
上顎洞炎
インプラント手術をする箇所が上の歯だった場合、頬骨の内側あたりにある「上顎洞(じょうがくどう)」に炎症が起こることがあります。手術の際に上顎洞に細菌が入り込んで上顎洞炎が起きると、鼻づまりや頭痛、歯・頬骨付近の痛みなどの症状が出ます。
審美性の問題
入れ歯やブリッジに比べて見た目が良いことも、インプラントの大きなメリットのひとつです。しかし、期待したような見た目に仕上がらない可能性があることも考慮しておきましょう。
自分の歯を失ったことで外部からの刺激を受けなくなると、どうしてもその部分の骨は痩せてしまいます。インプラント埋入後にも、骨量が減っていき歯茎が下がっていくと、インプラントに被せた人工歯が他の歯に比べて長く見えてしまうことがあります。
また、インプラントを埋めた部分の歯茎が痩せると、金属部分が歯茎から透けて、歯茎が黒ずんで見えてしまうケースもあります。
インプラント治療が向いていない方の特徴
以下のような特徴を持つ患者様は、インプラント治療があまり向いていないと考えられます。
- 歯科治療にお金や時間をかけたくない
- 定期的なメンテナンスができない
- 全身疾患がある
- 歯周病が進行している
- 骨密度が低い
- 喫煙している
インプラント治療を途中でやめてしまうと、細菌に感染したり見た目に悪影響が出てしまったりするリスクがあるため、おすすめできません。したがって、治療費が家計を圧迫してしまうおそれのある方や、歯科医院に通う時間の確保が難しい方は、保険適用内で受けられる治療を選ぶほうがいいでしょう。
また、お金や時間に関する条件をクリアしていても、体質や生活習慣によって不向きな方もいらっしゃいます。ただし、このような方はまず医師に相談することをおすすめします。他のクリニックでは断られた方でも、歯科医院や担当医によっては対応可能な場合があります。
一方で、インプラント治療には数多くのメリットがある
ここまで、インプラント治療のデメリットやリスクをお伝えしてきましたが、もちろんインプラントにはメリットもあります。
天然歯と同じ感覚を実現できる
インプラント治療における最も大きなメリットと言えるのが、天然の歯と同じような感覚を実現できることです。インプラントの場合、骨にインプラント体を埋め込んでいるため安定度が高く、自分の歯と変わらない感覚で食事をすることができます。
また、入れ歯を使う場合よりも舌を自然に動かせるため、発音にも影響が出にくいでしょう。
健康な歯に対する影響が少ない
インプラントは両隣の歯に頼らず自立していますので、他の歯に影響が及ばないこともメリットです。
例えば、入れ歯は両隣の歯にフックを引っ掛けて固定しますので、フックが両隣の歯を傷つけてしまうことがあります。また、ブリッジは両隣の歯を削ってそこに人工歯を被せるため、健康な歯を削ることになってしまいます。
自分の歯を1本失うだけでもショックなのに、虫歯でもない健康な歯を削らなくてはならないのはできれば避けたいところです。
他の歯を傷つけずに済むことも、インプラントの大きなメリットと言えるでしょう。
心身の健康促進につながる
入れ歯やブリッジにすると、あまり硬いものを噛めなくなります。歯のせいで好きな物を食べられなくなったり、家族や友達との食事中にいろいろと気にしなければならなかったりすると、ストレスになってしまいます。
その点、インプラントは自分の歯のように噛めるため、上記のようなストレスがなくなります。また、インプラントにしたことで食べ物をしっかりと咀嚼できるようになると、胃腸の健康にもつながるうえに、脳にもいい刺激が送られます。
自然な見た目に仕上がる
「咀嚼力が衰えても、歯を削るブリッジよりは入れ歯に……」という選択をする方もいらっしゃるかもしれません。しかし、入れ歯のデメリットのひとつに「見た目」があります。
基本的には、両隣の歯に金属製のフックを引っ掛けるので、入れ歯であることがわかってしまいます。さらに、保険適用内の義歯は天然歯と比較して色がやや不自然なため、義歯であることが分かりやすいと言えます。
インプラントの人工歯にはジルコニアやセラミックを使うことが多く、天然歯と似た見た目を再現できます。入れ歯のようにフックもありませんし、とても綺麗な見た目に仕上がります。
骨が痩せることを予防できる
先述したように、抜歯をするとその部分の骨や歯茎が痩せてしまいますが、顎の骨に適度な刺激が加わることでそれを予防できます。
インプラントは、入れ歯やブリッジと違ってインプラント体を埋め込みますので、咀嚼時に顎の骨にしっかりと刺激が伝わります。加齢とともに骨密度はどうしても低くなりますので、骨の健康を維持することは大切です。
骨が痩せるとフェイスラインまで変わってしまう場合もありますが、インプラントにすることでそれを防ぐ効果も期待できます。
長期にわたって使用できる
一般的に、入れ歯の寿命は4~5年、ブリッジは7~8年と言われ、インプラントは多くの患者様が10年以上使用されています。日々のお手入れやメンテナンスをしっかり行っていただければ、数十年使用することも可能です。
日々のお手入れと言っても、入れ歯のように取り外してクリーニングする必要はなく、普通の歯磨きと同じです。インプラント周囲炎にならないよう、丁寧なブラッシングで汚れを落とし、口腔内の衛生をキープしていただくことで長く使用できます。
まとめ
インプラント治療を受けるか検討している場合は、事前に以下のデメリットやリスクをしっかり頭に入れておくことが大切です。
- 治療費が高い
- 治療期間が長い
- 手術を受けなければならない
- 治療後のメンテナンスが欠かせない
- 術後に体調不良や不具合が起こる可能性がある
- インプラントが適していない方もいる
「歯は一生もの」と言われることがありますが、これは人工歯でも同じです。噛む際にストレスを感じていたり、口元を隠す癖がついてしまったりするよりも、思い切り食べたり笑ったりできる日々を送りたいものです。
今回挙げたデメリット以外にも不安点などがありましたら、いつでも本町通りデンタルクリニックにご相談ください。