インプラントはどのような構造でできている?構成するパーツや各パーツの種類

2025.06.14

 

インプラント治療は、失った歯を補う治療法として多くの方に選ばれています。歯を失い、これから治療に臨む方のなかには、「インプラントは安定性があると聞くけれど、実際にはどのような構造になっているの?」と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

 

そこで本記事では、インプラントの基本的な構造や、各パーツの種類についてわかりやすく解説します。インプラント治療を検討している方は、ぜひ本記事を参考にして、インプラントの仕組みを理解しましょう。

インプラントとは?

もともと「インプラント」とは、体内に人工の材料や部品を埋め込むことを指す言葉です。歯科の領域では、失った歯の代わりに人工歯根(歯の根っこの部分)を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法を「インプラント治療」と呼びます。

 

この治療によって、天然の歯の咀嚼力の80〜90%程度を取り戻すことが可能です。失った歯の治療法には、ブリッジ治療や入れ歯治療などがありますが、インプラント治療は、それらよりも高い咀嚼力を取り戻すことができるとされています。使用する素材にもよりますが、天然歯に近い自然な歯の美しさを再現できることも、インプラント治療の大きな特徴です。

 

ただし、インプラント治療は保険適用外となるので、治療費が全額自己負担となる点は注意が必要です。

 

関連記事:インプラントは保険適用になる?健康保険で治療を受けられる条件を解説

インプラントの構造

 

インプラントは、以下の3つのパーツによって構成されています。

 

  • インプラント体
  • アバットメント
  • 上部構造

 

ここからは、それぞれのパーツがどのようなものなのかを見ていきましょう。

①インプラント体

インプラント体とは、顎の骨に埋め込む部分のことで、「人工歯根」とも呼ばれます。普段は歯肉に覆われるパーツのため、埋入後は直接見えることはありません。

 

インプラント体は顎の骨と結合して歯の土台となり、装着する上部構造(人工の歯)をしっかりと支える役割を持っています。インプラントの特徴である天然の歯に近い安定した咀嚼力を発揮できるのは、インプラント体の働きが大きいです。

 

インプラント体のサイズは、一般的に直径約3〜5mm、長さ約6〜18mmです。治療を受ける方の骨の状態に合わせて、歯科医師が最適なサイズを選びます。

 

インプラント体に使用される素材には、チタンやチタン合金が用いられることが多いです。これらは、体になじみやすくアレルギー反応を引き起こすことがほとんどないので、金属アレルギーの方でもインプラント治療を受けることができます。また、インプラント体の形状はおもに4種類ありますが、なかでもスクリュータイプとシリンダータイプが主流です。この2種の形状については後述にて詳しく解説します。

 

素材の種類や形状、製品によって異なりますが、インプラント体1本につき10〜25万円程度が相場となっています。

②アバットメント

アバットメントとは、インプラント体と上部構造をつなぐ小さなパーツのことです。インプラント治療は、顎の骨に埋め込んだインプラント体にアバットメントをはめ込み、その上に上部構造を装着する流れで行なわれます。

 

アバットメントには、インプラントの強度を高める役割に加え、噛み合わせの際の高さを調節する働きや、インプラント体の傾きを調整する働きもあります。また、素材によっては目立ちがちなインプラント体を隠す役割もあり、審美性を高めるためにも欠かせないパーツです。

 

高さ・形状・素材が異なるさまざまなタイプのアバットメントがあり、一人ひとりの歯肉の厚さや噛み合わせの状態などを考慮して、適したものを選択します。素材の種類は後述しますが、本物の歯に近い美しさを求めるなら、目立たない色味の素材を選ぶことが大切です。

 

一般的に、アバットメント1つ当たりの費用は、3万円〜8万円程度です。また、対応できる症例は限られますが、アバットメントを使用しないインプラント治療もあります。

③上部構造

上部構造とは、アバットメントの上に取り付ける被せもののことです。人工歯とも呼ばれ、歯肉から露出している部分になります。

 

上部構造は、天然の歯の代わりに物を噛む役割を果たします。そのため、噛み合わせを考慮して適切に装着することが重要です。対となる歯との噛み合わせや周囲の歯との高さが合っていないと、食事の際にものがうまく噛めない、痛みや違和感が出るといった影響が出やすくなります。対の歯が折れたり割れたりする原因にもなるでしょう。

 

また、上部構造は、口を開けたり笑ったりしたときに見えるので、見た目の美しさも求められるパーツです。自然な仕上がりにするには、ほかの歯の色とのバランスを考えた色味にする必要があります。加えて、形状や大きさも適切なものにしなければ、仕上がりに違和感を感じてしまうでしょう。詳しくは後述しますが、上部構造の素材の種類はおもに5つあります。

 

一般的に上部構造の費用は、1本当たり10万円~20万円程度です。

インプラント体の形状の種類

 

前述したとおり、インプラント体の形状の種類は4種類あり、現在おもに使用されているのは、スクリュータイプとシリンダータイプです。それぞれの特徴について見ていきましょう。

スクリュータイプ

スクリュータイプのインプラント体は、ネジのような形をしています。

 

現在のインプラント治療では、主流となっているタイプであり、ほとんどの症例でこのスクリュータイプが採用されています。ネジを回し入れるようにして、顎の骨にしっかりとインプラント体を埋め込むことができるので、固定しやすく、安定性を確保しやすいのが特徴です。

シリンダータイプ

シリンダータイプは、円筒型のインプラント体です。

 

スクリュータイプと異なり、ネジのような溝は付いておらず、ハンマーのような専用器具で叩いて、顎の骨に埋め込みます。顎の骨に埋め込みやすいタイプではありますが、スクリュータイプに比べて表面積が小さいため、固定力が劣ることがあります。

アバットメントの素材の種類

インプラント体と上部構造をつなぐ役割を持つアバットメントの素材には、おもに4つの種類があります。ここからは、素材の種類ごとの特徴を解説します。

純チタン

純チタンとは、素材の約99%がチタンでできている素材のことです。

 

異物反応が起きにくい素材ですが、後述するチタン合金と比べると強度が低いため、使用されることはあまりありません。一般的に、純チタンのインプラント体を埋入する場合は、純チタンのアバットメントが選ばれます。

チタン合金

チタン合金とは、チタンやアルミニウムで構成される素材のことです。

 

耐久性が高く、錆びにくいのが特徴で、インプラントの寿命を伸ばすのにも役立ちます。また、歯茎にしっかりと密着する性質があるため、インプラントの安定性を高めるのにも効果的です。ただし、金属の色味なので、歯茎が下がるとアバットメントが露出してしまい、審美性が損なわれることがあります。

ジルコニア

ジルコニアとは、酸化ジルコニウムでできたセラミック素材のことです。

 

天然の歯に近い自然な透明感と白さが特徴で、万が一歯茎が下がってアバットメントが露出しても、審美性が損なわれる心配がありません。セラミック素材なので、金属アレルギーがある方にも適しています。金属に劣らない硬度で、高い耐久性を持つことも特徴です。

金合金

金合金とは、金とほかの金属を混ぜ合わせた素材のことです。

 

金属のなかでも柔軟性のある金を含んでいるため、伸びやすく、インプラント体となじみやすい性質を持ちます。ただし、チタン合金同様、歯茎が下がってしまうと、金属の色味が目立ちやすい傾向です。加えて、金は価格が高いので、金合金のアバットメントを選ぶと、費用が高額になる恐れがあります。

上部構造の素材の種類

 

インプラントの審美性を大きく左右する上部構造の素材には、おもに5つの種類があります。素材の種類ごとの特徴について、詳しく見ていきましょう。

オールセラミック

オールセラミックとは、文字どおりセラミックだけで作られた上部構造のことです。

 

自然な白さと透明感があるため、天然の歯に匹敵するほどの自然な歯に仕上げられます。色味の調整が可能なので、周囲の歯となじませることも可能です。傷や汚れに強い性質を持ち、また、金属ではないため金属アレルギーがある方も使用できます。

ジルコニア

ジルコニアとは、セラミックの一種で、オールセラミックの5倍程度の高い強度を持つ素材のことです。

 

固いものを噛んでも欠けや割れが起こりにくく、金属ではないので、金属アレルギーの心配もありません。以前は、自然な歯の白さを再現しづらいというデメリットがありましたが、近年は色味の選択肢が増え、自然な仕上がりを実現できるようになってきています。

ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックとは、セラミックと樹脂を混ぜ合わせた素材のことです。

 

自然な色味を再現でき、金属不使用のため、金属アレルギーの方も選択できます。オールセラミックやジルコニアよりも、コストを抑えられるのが大きな特徴です。

 

ただし、経年により黄ばみが起きやすいうえ、すり減りやすい傾向にあります。歯垢が付着しやすい性質もあるため、日々のメンテナンスには注意が必要です。

メタルボンド

メタルボンドとは、内部が金属で、表面にセラミックを焼き付けた上部構造のことです。

 

審美性や耐久性にも優れています。表面がセラミックなので、変色しづらく、汚れが付きにくいことも、メタルボンドの特徴です。

 

ただし、内部が金属のため、金属アレルギーがある方には適していません。

金属

金属の上部構造とは、いわゆる金歯や銀歯のことです。

 

高い強度を持ち、対となる歯への負担を抑えられます。また、ほかの素材と比べて低コストなため、インプラント治療の費用負担を軽減できるのが特徴です。

 

ただし、金属の色味が目立つので、口を開けた際に見える歯の上部構造としては、適していません。一般的に、奥歯などの目立ちづらい歯の被せものとして使用されます。

 

関連記事: インプラントの素材の種類とは?パーツ別に各素材のメリット・デメリットを紹介します

まとめ

インプラントはインプラント体・アバットメント・上部構造の3つで構成されており、パーツごとに形状や素材の種類などさまざまなバリエーションがあります。違和感がなく、満足度の高いインプラント治療を受けるには、骨の状態や噛み合わせ、求める仕上がり、予算などを考慮して、最適なものを選ぶことが重要です。

 

後悔のないインプラント治療を受けるために、歯科医師としっかり相談し、納得したうえで治療を受けましょう。

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