インプラント(オールオン4)と総入れ歯の費用目安とは?メリット・デメリットを徹底比較
2025.05.10
加齢や歯周病などですべての歯を失った場合、総入れ歯にすることが一般的です。近年はインプラントの治療方法が進化したこともあって、「オールオン4」というインプラント治療を選ぶ方も増えています。
しかし、オールオン4はなじみのない治療法であるため、総入れ歯とどちらを選べばいいか悩む方も多いでしょう。
今回は、インプラント治療のオールオン4と総入れ歯の概要、費用の目安、両者のメリット・デメリットについて比較していきます。
インプラント治療の「オールオン4」とは?
オールオン4とは、すべての歯を失った方のために開発されたインプラント治療法です。
そもそもインプラント治療とは、顎骨に人工歯根であるインプラント体を埋め込み、その上に人工歯を装着するものです。インプラント治療にはいくつかの方法がありますが、すべての歯を失った患者様に対しては、「オールオン4」と呼ばれる治療法が適応されます。
オールオン4とは、最小4本のインプラント体に、総入れ歯のような形状の連結した人工歯(10~12本)を装着する方法です。わずかな数のインプラント体ですべての歯を装着できるのがオールオン4ならではの特徴です。
総入れ歯とは?
総入れ歯とは、上下のどちらか、またはすべての歯を失った際に適応となる、一般的な治療方法です。
総入れ歯の構造は、人工歯とプラスチック製の歯茎を組み合わせたシンプルなものです。総入れ歯の歯茎部分を「床(しょう)」といい、歯茎に吸盤のように吸い着くことで入れ歯を固定します。
保険診療の総入れ歯での床は、ピンク色をしたレジンというプラスチック素材で作られます。審美性や機能性、装着感などはインプラントよりも劣りますが、保険診療により安い値段で歯を取り戻せるのは総入れ歯の魅力です。
しかし、プラスチック素材の総入れ歯は耐久性が低かったり、厚みから異物感を覚えたりすることがあります。見た目と快適性を高めるため、床が金属製など自由診療の総入れ歯を選ばれる患者様も少なくありません。
オールオン4と総入れ歯、それぞれの費用目安
オールオン4と総入れ歯の治療にかかる費用の目安は次のとおりです。
オールオン4の費用目安
オールオン4にかかる費用の目安は、片顎で総額180~400万円程度になります。費用の大まかな内訳は、以下のとおりです。
- 検査・診断の費用:1万5,000円~5万円
- 手術の費用:120万~180万円
- 人工歯の作製費用:60~180万円程度
オールオン4をはじめとするインプラント治療は、原則的に保険適用ではなく自由診療です。そのため、保険が使える総入れ歯と比べ、必然的に治療にかかる費用は高額になります。
総入れ歯の費用目安
総入れ歯にかかる費用の総額は、保険適用の負担率で異なります。3割負担の場合は2万円~2万5,000円程度、後期高齢者の1割負担で7,000円程度が目安です。
3割負担の場合、費用の内訳は以下のとおりです。
- 検査・診断の費用:1,500~2,000円
- 入れ歯の作製費用:2万~2万3,000円
総入れ歯は、保険適用で作製できるため、オールオン4と比べて費用を大幅に抑えられます。
また、保険が適用されない自由診療の総入れ歯では、金属製のもので10万円~50万円程度の費用がかかります。自由診療という観点で比較した場合でも、インプラントよりも総入れ歯の費用が安いことがわかるでしょう。
オールオン4と総入れ歯のメリット・デメリットを比較
オールオン4と総入れ歯、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。両者のメリット・デメリットを比較したうえで、自分に合う方法を選びましょう。
オールオン4のメリット・デメリット
オールオン4のおもなメリット・デメリットは、以下のものが挙げられます。
【オールオン4のメリット】
◆審美性に優れており、見た目が自然である◆
オールオン4では、インプラント体と呼ばれるチタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、それを土台に人工歯を装着して固定するという治療方法です。入れ歯のように金属の部品が見えることもなく、見た目も本来の歯のように自然です。
入れ歯のように動かない機能性に加え、口元を美しく見せる審美性に優れているのはインプラントならではの魅力といえるでしょう。
◆耐久力が高く、寿命が長い◆
オールオン4の寿命は、一般的なインプラント治療と同様に10年~15年程度とされています。適切にメンテナンスをすることでさらに寿命が延び、寿命を大幅に延ばすことができます。
オールオン4を含め、インプラントは虫歯のリスクがありません。しかし、日常的なセルフケアを怠ると、歯周病の一種である「インプラント歯周炎」を発症するリスクが高まります。
インプラント歯周炎とは、顎の骨に埋め込んだインプラント体の周りに炎症が起こることで、歯茎から出血したり、歯茎が下がったりする可能性があります。特に、インプラント歯周炎は自覚症状に乏しく、症状が早く進行しやすいため、定期的な歯磨きやクリーニングなどのメンテナンスが必須です。
◆噛む力を維持して、しっかりと食べ物を咀嚼できる◆
オールオン4で治療した場合、歯の噛む力は自然の歯とほとんど変わりません。
これは顎の骨にあるインプラント体と人工歯がしっかり固定されるため、総入れ歯のようにずれたり外れたりすることがないためです。自分の歯に近い感覚で、しっかりと食べ物を咀嚼できるのはオールオン4にするメリットの一つです。
【オールオン4のデメリット】
◆費用が高額である◆
インプラント治療は自由診療であり、保険診療と比べて治療費が高額です。
通常のように1本ずつ行なうインプラント治療に比べれば、オールオン4なら費用を安く抑えることはできます。しかし、それでも数百万円以上の費用がかかるため、わずか2万円程度で作製できる総入れ歯と比較すると高額なイメージは否めません。
◆外科手術をともなう◆
オールオン4の治療では、顎の骨にインプラント体を埋めるという外科手術が必要です。高齢の方や体力が衰えた方にとって手術が負担になる可能性もあります。
◆治療期間が長い◆
顎骨の外科手術に加え、インプラント体が完全に顎の骨と結合するまで治療が必要です。人工歯が装着できるようになるまで、およそ6ヵ月程度の時間がかかります。
ただし、治療の経過は人それぞれで異なるため、早く終わる、または長引くケースもあります。
総入れ歯のメリット・デメリット
総入れ歯における、メリット・デメリットは次のとおりです。
【総入れ歯のメリット】
◆費用が安い◆
費用の比較で紹介したとおり、総入れ歯のメリットは圧倒的な費用の安さです。保険適用の総入れ歯にかかる費用は2万円程度と、200万円以上もかかるオールオン4の1/100で済みます。
◆外科手術が不要で、身体的な負担がほとんどない◆
総入れ歯では歯の治療や外科手術も不要で、身体的な負担は一切ありません。
顎の骨が少ない、糖尿病など全身疾患の持病がある方など、オールオン4の治療ができない方もいます。総入れ歯であれば、わずかな治療だけで全部の歯を取り戻すことが可能です。
◆治療期間が短い◆
オールオン4治療と異なり、総入れ歯なら治療も短期間で終了します。
総入れ歯を作る場合、初診時に口腔内を診察し、今後の治療方針を決めます。型取りをして歯科技工士に総入れ歯の製作を依頼し、およそ1ヵ月~2ヵ月で入れ歯が完成するという流れです。
早く歯を入れたい方、外科治療を避けたい方は、治療期間が短い総入れ歯が適しているでしょう。
【総入れ歯のデメリット】
◆噛む力が弱い◆
総入れ歯のデメリットは、オールオン4と比べて噛む力が弱くなることです。自然歯の噛む力と比較すると、総入れ歯では10%~30%程度に落ちるとされています。
総入れ歯は唾液で口の中の粘膜と密着させているだけで、インプラントのように固定しているわけではありません。入れ歯が動いたり外れたりする可能性があるため、どうしても噛む力が弱くなるのです。
◆寿命が短い◆
総入れ歯の寿命は、一般的に3~4年程度とされています。10年~15年以上も持つインプラントと比べ、総入れ歯は長くは持ちません。
総入れ歯の寿命が短い理由は、以下のものが挙げられます。
- 総入れ歯の土台となる歯槽骨(しそうこつ)が加齢で痩せる
- 総入れ歯の素材の経年劣化
- 総入れ歯のメンテナンス不足
◆日々のメンテナンスに手間がかかる◆
総入れ歯を使う場合、毎食後にブラッシング、就寝前はブラッシングに加え洗浄剤への浸漬などのメンテナンスが必要です。
また、入れ歯が口に合わなくなることがあるため、定期的に歯科医院に通って調整してもらうことも必要です。
まとめ
総入れ歯にする必要がある場合、総入れ歯とインプラントのオールオン4のいずれかが選択肢となります。費用を安く、かつ早く歯を入れたい方は、保険が適用される総入れ歯が適しているでしょう。
審美性や噛む力、歯の寿命を重視する方は、時間とお金をかけてでもオールオン4にするのがおすすめです。
ただし、オールオン4と総入れ歯では費用以外にも治療の難易度に大きな差があるため、歯科医師と相談しながら自分の状況に合う方法を総合的に判断しましょう。