インプラントに生命保険は適用できる?治療費の負担を軽減する4つの方法を解説

2025.05.10

 

噛み心地も見た目もとてもクオリティの高いインプラントですが、気になるのはその費用です。入れ歯かブリッジかで迷っていたけど、本当はインプラントにしてみたい、でも治療費が……と悩んでいる方も多いようです。

 

どうにか費用を抑える方法が無いか、もしくは費用を補える方法は無いかと考えてみると、「加入している生命保険から給付金が出るかもしれない」と思い当たる人もいるかもしれません。

 

インプラント手術・治療は加入している生命保険から給付金がおりるものなのでしょうか。その回答と共に、インプラント手術・治療の費用を抑える方法をいくつかご紹介していきます。

インプラント治療に生命保険は、原則適用外

結論からお伝えすると、インプラント手術・治療は、生命保険から給付金はおりず、「適用外」となります。

 

個人で加入している生命保険ではなく、企業の組合で加入している健康保険や、国民健康保険でも残念ながらインプラントは適用外となっています。

 

以下に、その理由と経緯などを詳しく解説していきます。

そもそも生命保険とは?

生命保険とは、病気や怪我、死亡、介護状態などになった際に、その治療費や通院費、生活費などに使うためのお金が受け取れる仕組みです。

 

民間の生命保険会社がいろいろな保険商品を売り出し、その商品に加入すると「保険料」として毎月、もしくは毎年、一定の保険料を支払います。保険料がいくらで、どんな状態になった時にいくらぐらいの給付金が受け取れるのかは商品によって様々です。

 

死亡保障は無く、がん、三大疾病などに特化した商品もあり、家族構成やライフプランなどによって保険商品を選ぶことができます。

各生命保険会社が扱っている主な商品ラインナップとしては、死亡保障がメインとなっている生命保険、怪我や病気などで治療費が嵩んだ際に受け取れる医療保険、介護状態になって働けなくなった際の介護保険、年金生活に入った際に受け取れる個人年金、お子さんの教育資金を将来受け取るための学資保険などがあります。

 

「病気になるかどうか分からないし、何歳で死亡するのかも分からないのに保険料を払い続けたくない。それなら、その分を貯金しておく」と、保険に加入しない考え方の人もいるでしょう。

インプラント治療に生命保険は原則適用外となる理由

 

それだけいろいろな保険商品が販売されていますが、残念ながらインプラント手術・治療を受けた際に給付金が出る商品はありません。

 

それは一体なぜなのでしょうか。

自由診療は生命保険の適用外だから

民間の保険商品で給付がされる対象は、原則として「保険適用内の医療費」に限られています。美容整形や脱毛、歯のホワイトニングや歯列矯正など、身体の機能性を回復させる目的ではなく、美しくすることなどを目的とした診療は「自由診療」「保険適用外」と呼ばれ、全額自費となり、生命保険や医療保険の給付金対象ではありません。

 

インプラント手術・治療も審美面を考慮され、「自由診療」のカテゴリーですので、生命保険や医療保険で給付金対象ではありません。

先進医療特約の支払い対象外だから

生命保険や医療保険には、よく「先進医療特約」というオプション項目があります。

 

先進医療とは、厚生労働省が認めた高度な最新医療技術のことです。大学病院などである程度の実績を積み、今後保険適用されるかどうか、厚生労働省で審議中の段階にある治療法になります。

 

厚生労働省が各医療機関でその医療技術を使うことを認めてはいるものの、保険適用ではないので、全額自己負担となります。その費用は数百万円にのぼることがほとんどで、「先進医療特約」のオプション付帯をしておくと、先進医療を受けた際に大きな金額の給付がされます。

 

では、自由診療のインプラントは先進医療ではないのか?というと、残念ながら先進医療ではありません。

実は2012年3月31日までは一部のインプラント治療が先進医療として扱われていましたが、2012年4月1日からは保険適用されるようになったので、先進医療の枠から外れました。

つまり、2012年3月31日までに生命保険や医療保険で先進医療特約をつけていた人には、インプラント治療で支払った費用に充てるために保険金の給付がされていました。

 

2012年4月1日からは保険診療に変わったので、先進医療特約からの給付金はありませんが、保険診療になっていますので、手術給付金などは受け取れる可能性があります。

 

ただ、これはあくまで一部のインプラント治療であり、その内容は次の項目でご説明します。

インプラント治療で生命保険が適用される場合もある?

ほとんどのインプラント治療は保険適用外の自由診療になりますが、ごく一部の場合に限り、保険が適用されることがあります。

 

これが先ほどお伝えした「一部のインプラント治療は保険適用されるので給付金が受け取れる」ケースにあたります。

インプラント治療でも、保険給付を受けられる可能性がある

インプラント手術・治療を受ける際、以下の条件にあてはまる人は保険適用される可能性があります。

【先天的理由】

  • 生まれつき、顎骨の3分の1以上が欠損している
  • 生まれつき、顎骨が形成不全である
  • 骨移植を行ない、顎の骨を再建した

【後天的理由】

  • 第三者による事故で顎骨を損傷した
  • 病気によって顎骨を欠損した

 

これらに該当するケースでインプラント手術・治療を受けた人には、加入している生命保険や医療保険から給付金が支給される可能性があります。

しかし、この条件に当てはまっていた場合でも、手術・治療を受ける病院に以下のような指定がありますのでご注意ください。

保険適用のインプラント治療が受けられる歯科医院の条件

  • 歯科または歯科口腔外科の病院である
  • 歯科または歯科口腔外科の分野で5年以上の経験がある、または3年以上のインプラント治療の経験がある常勤の歯科医師が2名以上在籍している
  • 当直体制が整っており、万一のトラブルに対応できる
  • 医療機器の保守管理や、医薬品にかかわる安全確保が徹底されている

 

これらをすべて踏まえると、保険適用内でインプラント手術・治療を受けることも、生命保険や医療保険で給付金を受け取ることも、ほとんどの方にはあてはまらないと言えます。

 

関連記事:インプラントは保険適用になる?健康保険で治療を受けられる条件を解説

インプラント治療が高額な理由

そもそも、インプラント手術・治療はなぜこんなに高額になってしまうのでしょうか。その理由について、簡単にご説明します。

自由診療だから

先ほどお伝えしてきたように、インプラント手術・治療のほとんどは自由診療になり、公的な医療保険が使えず、全額自己負担となります。

 

歯科医院で一般的な治療を受ける際もそうですし、日本で何かの治療を受ける際、ほとんどの場合は「健康保険証」や「マイナ保険証」を提出して、治療費の3割程度の支払いで済んでいます。うっかり保険証を忘れたり、旅先などで保険証を携帯していない際に診療を受けて治療費の全額を支払ったときに、その金額に驚いた経験を持つ人もいるのではないでしょうか。

 

つまり、インプラントはもともと「保険証が使えない治療」ということです。

 

インプラント手術・治療がこの医療保険の適用外となっている理由として、その審美性の高さが挙げられます。加えて、自分の歯を失ったところに義歯を入れる方法として、インプラント以外に入れ歯・ブリッジなどの選択肢があるから、という理由もあるでしょう。

 

ちなみに、入れ歯やブリッジを選択したとしても、人工歯の種類を保険適用外の素材(ジルコニア、セラミックなど)を選べば、費用は大きく上がります。

 

関連記事:インプラントの素材の種類とは?パーツ別に各素材のメリット・デメリットを紹介します

高度な技術と設備が必要だから

インプラント手術・治療を行うにあたり、歯科医師は一般的な歯科知識のみではなく、インプラントに関する専門知識を学んでいなければなりません。インプラントほど大きな外科手術を伴う歯科治療は他にありませんし、外科手術を行うためには、専用の精密検査機器や生体モニターなども必要です。

 

それらの高度な知識の習得、鍛錬された技術、高価な機器など、インプラント手術・治療を行うにあたり、かなりのコストがかかっています。

 

インプラントは日本に輸入されてまだそれほど長い年月が経っていませんので、最新の知識や情報を学ぶために世界規模の学会に出席したり、国内のインプラント学会に出席してそれらを共有する必要もあります。

 

逆に、そのような知識や経験などが無いままインプラント手術・治療を行っている格安の歯科医院に依頼することは注意が必要です。

インプラント手術・治療は歯科医師免許があれば誰でも行うことができ、特別な許可や資格がないため、腕の良さがはかりにくい側面があります。

 

しっかりと知識を学び、経験を積み、万全な態勢で手術・治療を行っているからこその金額になっているのです。

インプラント自体が高いから

インプラントは「インプラント体」と呼ばれる人工歯根を顎の骨に埋め込み、そこから「アバットメント」というネジ状の部品を出して、義歯に繋げる構造になっています。

 

 

これらの部品の素材は顎の骨と歯茎の中に埋めるため、生体親和性の高いものでなければいけません。インプラントの部品はいろいろなメーカーで作られており、どのメーカーの部品を使用しているか、歯科医院によってそれぞれです。

安全性が確保された素材を使用することが大前提なはずですが、中には安価で低品質な部品を使用してトラブルになっているところもあるようです。

 

大切な体の一部になる部品ですので、「安かろう悪かろう」でいいわけがありません。高い品質と安全性が保証されているメーカーの部品はもちろん安くはありませんので、部品代がどうしても高額になってしまいます。

 

関連記事:インプラントってなぜ高額なの?その理由と信頼できるクリニックの選び方

インプラントの治療費の負担を軽減する4つの方法

 

公的な医療保険も使えず、生命保険や医療保険でも給付金の対象外となってしまっているインプラント。

 

さまざまな理由から、インプラント1本あたりの相場は30〜50万円ほどですので、誰でもが簡単に出せる金額とは言いづらい部分があります。

それでも、「インプラントにして良かった」と思えるほどインプラントは機能性も審美性も優れています。私たちも「費用の面で諦めていただきたくない」という思いがあり、少しでも費用を下げるコツをお伝えします。

相見積もりを取る

「自由診療」は、各歯科医院で自由に費用を決めることができます。先ほどお伝えしたように、インプラントが高額になってしまうのはそれ相応の確かな理由があるのですが、利益率や人件費などはクリニックによって多少の差が出ます。

 

また、患者様の体質によって、事前処置の追加などで費用が上がるケースがあります。歯科医師の判断、腕や技術によってそれらの処置の要・不要なども分かれます。

 

ご自身の口腔状態でインプラント治療を受ける際に、相場としてどれくらいの費用になるものなのかを知るためにも、通える範囲の歯科医院をいくつかピックアップし、相見積もりをお願いすることによってコストダウンに繋がる可能性があります。

歯科医院によっては、独自のキャンペーンを実施していることもあるようです。

 

なお、格安を謳う歯科医院がすべて怪しいというわけではありませんが、安い部品を使っていたり、本来は必要な経費を削っていたりすることもありますので、「いちばん安かったから」と価格面のみで決めてしまわないようにご注意ください。

 

関連記事:インプラント専門医・歯科医院の選び方とは?押さえておきたいポイント11選を徹底解説

医療費控除を利用する

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費が10万を超えた際に、納めた税金が返ってきたり(還付)、翌年度の住民税が軽減される制度のことです。年収が200万円未満の人は年収の5%以上の金額を医療費に支払った場合になります。

 

インプラント手術・治療もこの医療費控除の対象となりますので、申請が可能です。どれくらいの還付が受けられるかというのは、以下の計算式をご利用ください。

 

 

ただし、医療費控除を申請する際はご自身でその年度の確定申告をする必要があります。企業にお勤めの方は、会社側で申告はすべて済ませてくれるので個人で税務署に出向くことはほぼ無いと思いますが、医療費控除を申請する際はご自身で税務署に申告書を提出しなければいけません。

税務署に直接提出するか、郵送するか、e-Taxを利用してオンラインで申告をしましょう。

高額療養費制度を利用する

日本には「高額療養費制度」というものもあります。1か月間の治療費が高額になった際に、健康保険組合や国民健康保険から補助がおりる制度のことです。

 

補助がおりる枠に入る治療費がいくら以上なのかは各保険機構によってそれぞれですが、支給対象は「保険適用の診療」になります。

よって、ほとんどのインプラント治療には適用できません。

一部の保険適用がされるインプラント治療でのみ、この制度が利用できます。

デンタルローンを利用する

インプラント費用をコストダウンさせる方法ではありませんが、家や車をローンで購入するように、インプラントにもローンが使える場合があります。

「デンタルローン」は銀行や信販会社が販売している商品で、カードローンやクレジットカードの分割払いの手数料よりも比較的低い金利になっています。

 

数十万円という大きな金額を一括で支払うよりも、月々の収入の中から無理なく少しずつ支払えるならインプラントにできる、という人も少なくないはずです。

 

ただ、デンタルローンを扱っている歯科医院はあまり多くないので、歯科医院を選ぶ際の条件に入れてみるのもひとつです。

 

また、デンタルローンを利用してインプラント費用を支払った場合でも、先ほどの医療費控除を申請できますので、覚えておきましょう。

まとめ

インプラントに生命保険や医療保険の給付金が適用できるかどうか、をご説明しました。結論としては、残念ながら「ほとんどのインプラント治療には適用できない」。

 

そのために、「インプラントにしたいけど、治療費が高すぎて手が出せない……」と思いとどまっている方が多いように思います。しかし、日本の制度をうまく利用したり、ご自身の収入に対して無理のない支払い方を選択することは可能です。

 

「仕方なくブリッジにしたけど、結局そのせいで他の歯も虫歯になってしまった」「入れ歯が全然合わなくて食事が楽しくない」と悩んでいる方が非常に多い中、インプラントを選んだ方の満足度は非常に高いものがあります。

 

費用面でインプラント治療を躊躇されている方がいらっしゃれば、ぜひ一度本町通りデンタルクリニックまでご相談ください。患者様のご無理のない範囲でのお支払方法や、本当にインプラントが向いていらっしゃるのかどうかも含めてアドバイスをさせていただきます。

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