インプラントメンテナンスの基本|頻度・費用相場・引っ越し時の注意点

2025.10.14

 

インプラントは、機能性・審美性ともにクオリティが高く、当院でも多くの患者様の治療を行っています。

 

入れ歯やブリッジには無いメリットが多くある一方で、保険が適用されないので費用が高くなってしまうことがインプラントの弱点とも言えます。

 

そして、その費用のうちには「メンテナンス」も含まれてきます。

 

今回は、インプラントのメンテナンスとは、具体的にどのようなことを行うのか、頻度や費用はどれくらいなのか、もし引っ越しをした際はどうすればいいのかなどを解説していきます。

インプラントのメンテナンスが必要な3つの理由

インプラントは治療が完了したあと、ほとんどの歯科医院で定期メンテナンスの案内があるはずです。

 

「不具合が出たらまた来てください」ではなく、何も不具合が無くても通うのが「定期メンテナンス」になります。

 

不具合が無くてもメンテナンスが必要なのは、どんな理由からなのでしょうか。

1.歯周病を防ぐため

インプラント治療を受けた場合に、最も注意しなければいけない病気が「インプラント周囲炎」です。

 

インプラント周囲炎とは、インプラント特有の歯周病です。

 

 

 

インプラント周囲炎の特徴は、初期症状に気付きにくいことと、進行が進むとインプラントを支えている顎の骨を溶かしてしまうことで、インプラントが抜け落ちることにも繋がっていきます。

 

特にインプラント治療箇所は歯茎から部品が露出していることで、その隙間から細菌が侵入しやすい状態になっています。

 

プラーク(歯垢)が溜まらないように日々の歯磨きを丁寧に行っていただくことがその防止策となりますが、防ぎきれないケースもあります。

 

自覚症状が無いということも含め、定期メンテナンスでインプラント周囲炎の予兆が無いか確認することが非常に重要となっています。

2.残っている歯の健康を守るため

インプラント周囲炎になってしまうと、その細菌が広がって両隣の歯・歯根にも影響が及ぶ可能性があります。

 

インプラント治療箇所はもちろんのこと、その両隣、周囲の歯、そしてすべての歯が健康な状態であるかどうか、定期検診も含めてチェックします。

3.インプラントの保証を受けるため

インプラント治療を行っているクリニックの中には、保証制度を設けているところが少なくありません。

 

インプラント治療後に不具合が出た場合、無償で再治療が受けられるというものです。

 

もしその制度が無い場合、例えば人工歯が欠けてしまったら数万円する人工歯を入れ直さなければいけません。

 

ただ、保証制度が設けてあったとしても、無償で再治療を受けるためには「定期メンテナンスに通っていただいていること」という条件が設定されているケースが多く、私たち本町通りデンタルクリニックも同じです。

 

せっかく利用できる保証制度が無効にならないようにするためにも、定期メンテナンスに通い続けることが大切です。

インプラントのメンテナンス頻度

では、インプラントの定期メンテナンスにはどれくらいの頻度で通うべきなのでしょうか。

 

各歯科医院によってその間隔は様々と言えますが、一般的には3~6カ月程度が推奨されています。

 

また、患者様の口腔状態や体調、治療が完了してからの期間によっても様々と言えます。

 

治療後、まずは1カ月後、その次は3カ月後に、しばらく通って特に大きなトラブルが見受けられない様子なら6カ月後に、と間隔が長くなっていくパターンもあります。

歯科医院で行うインプラント メンテナンスの流れ

ここでは、インプラントの定期メンテナンスで何をするのか、具体的な流れや内容をお伝えしていきます。

1.口腔内チェック

まずは、インプラント周囲炎になっていないか、その兆候は無いか、周辺の歯に異常は無いかなどを目視でチェックしていきます。

 

インプラント周囲炎以外にも、人工歯の破損、グラつきや炎症などの異常が出ていないかどうかを念入りに確認します。

2.レントゲン検査

目視での確認に加えてレントゲン検査によって歯根や骨の状態に異常が無いかなど、内部もしっかりチェックしていきます。

 

レントゲン検査は年に1回でOKとする歯科医院もあります。

3.クリーニング

ご自身の歯磨きでは届かない箇所を、専用の器具にて歯科衛生士が隅々まで綺麗にしていきます。

4.噛み合わせ調整

インプラント治療の際に嚙み合わせもしっかり確認してインプラントを埋入していきますが、噛み癖や加齢などにより、歯の位置は少しずつズレていきます。

 

数か月後、数年後に嚙み合わせがズレてしまっているケースもありますので、定期メンテナンスの際に嚙み合わせもしっかり確認していきます。

5.ブラッシング指導

プラークの残り方などを見て、歯科衛生士が磨き残しやすくなっている箇所を伝え、正しい磨き方や適切な道具などを一緒に確認していきます。

 

インプラントを長く快適にお使いいただくためには、日々の歯磨きが何より大切です。

インプラントのメンテナンスの費用相場

 

インプラント治療は保険適用外の治療ですので、定期メンテナンスにも保険は適用されず、費用が発生します。

 

費用相場は歯科医院によってまちまちですが、1回あたり3,000円~1万円程度が相場と言えます。

 

関連記事:インプラントのメンテナンスにかかる費用とは?相場や必要性も解説

インプラントのセルフメンテナンスのポイント

「インプラントを長く快適に使っていただくためには日々の歯磨きが何よりも大事」とお伝えしましたが、ここで改めてセルフケアをする際のポイントをお伝えしていきます。

丁寧なブラッシングを心がける

インプラント治療をされた方だけではなく、多くの患者様の歯磨きを見ていると、力を入れ過ぎていることが非常に多いと感じます。

 

「綺麗にしなきゃ」と思うと、どうしても強い力でゴシゴシと磨いてしまうようですが、それは間違ったブラッシングです。

 

固い歯ブラシでゴシゴシと強く磨くと歯茎を傷つけ、その傷口から細菌が入り込んで腫れたり出血したりします。

 

特にインプラント治療箇所は歯茎と部品の隙間から細菌が侵入しやすい状態になっているため、歯茎を傷つけるようなブラッシングはNGです。

 

力を入れ過ぎず、先端の柔らかい歯ブラシで優しく小刻みに動かすことが、プラークをしっかり取り除くコツです。

研磨剤なしの歯磨き粉を選ぶ

歯磨き粉にも様々なものがありますが、研磨剤入りの商品がほとんどです。プラークを落としやすくする目的ですが、人工歯に研磨剤入りの歯磨き粉を使用すると、傷がついてしまうことがあります。

 

研磨剤が使用されているものは成分表のところに「炭酸カルシウム」「ケイ素」などが入っていますので、確認してみましょう。

 

研磨剤が入っていないものは、商品パッケージに「無研磨」「研磨剤フリー」と表記があったり、ジェル状の歯磨きペーストは研磨剤が入っていない商品が多いので、おすすめです。 

フロスや歯間ブラシを使用する

 

インプラントのみならず、すべての歯に言えることですが、歯磨きは歯ブラシだけでは不十分と言えます。

 

先端の細い歯ブラシを使っても歯と歯の間には届きにくく、プラークを完全に取り除くことができません。

 

歯間に入り込んでいるプラークをしっかり落とすには、デンタルフロスや歯間ブラシが有効です。

 

使用するタイミングは歯磨きの前で、歯間を綺麗にしてから歯磨きをすることで、歯磨き粉に含まれている成分が歯間にもしっかり行き渡ります。

 

生活習慣を改善する

インプラントを長く快適に使っていただくには、体調管理も大切です。

 

特に喫煙は血液の流れを悪くしますので、インプラント周囲炎のリスクが高まるなど、インプラントにも悪影響となります。

 

また、歯ぎしり癖や食いしばり癖のある方も注意が必要です。強い力がかかるとインプラントの破損や嚙み合わせの悪化に繋がりますので、歯科医師に相談していただき、マウスピースの使用などをご検討ください。

 

関連記事:インプラント治療後のアフターケアとは?寿命を延ばすケア方法を全解説

引っ越しなどで違う歯医者でメンテナンスする際の注意点

 

インプラントの定期メンテナンスは、基本的にはインプラント治療を受けた歯科医院にて行うのが理想です。

 

患者様の歯の状態や体質、手術に関するデータなどがすべて揃っているからです。

 

では、転勤などで居住地が変わってしまう場合はどうすればいいのでしょうか。

通っている歯医者に転院することを伝える

インプラント治療において使用する部品には、様々なメーカーや形状があります。歯科医院によって、どのメーカーを採用しているのかはそれぞれです。

 

つまり、インプラント治療を受けた歯科医院で採用しているメーカーと、転院先の歯科医院で採用しているメーカーが別、という事態になることがあります。

 

「当院ではこのメーカーのインプラントは対応不可」となってしまわないよう、転居先から通える歯科医院にあらかじめ問い合わせ、定期メンテナンスに通いたい旨を確認しましょう。

 

そして転居する前に、転居する予定があることを歯科医院に伝え、転院予定の歯科医院宛てに紹介状を書いてもらうとスムーズです。

 

患者様の治療の詳細などが記載されている「インプラントカード」というものを扱っている歯科医院もありますので、問い合わせてみるのもいいでしょう。

転院先でも保証制度が使えるか確認する

インプラントの保証制度を設けている歯科医院で治療を受けた場合、治療後に何か不具合が出た場合でも無償で再治療が受けられることを先ほどお伝えしました。

 

では、転院先でもその保証制度はそのまま使えるのでしょうか。

 

これは転院先の歯科医院次第と言えます。こちらも転居前に両方の歯科医院に確認をしておいたほうがいいでしょう。

まとめ

インプラントにおいて、メンテナンスが必要不可欠であることや、メンテナンスの詳細などをお伝えしました。

 

インプラント治療は、決して気軽に出せる費用ではありません。多くの患者様が快適な口腔環境を求めて勇気を出して治療を決断されています。

 

安くない費用をかけて、長い治療期間をかけてせっかく入れたインプラントですので、長く快適にお使いいただきたいというのが私たち歯科医師全員の願いです。

 

そのために最も重要なのは、こまめなお手入れです。ご自身では「ちゃんと歯磨きをしているし痛みなども出ていないから問題ない」と思っていても、ぜひ年に1~2回はプロのチェックを受けましょう。

 

インプラントの一般的な耐用年数は10年~15年と言われていますが、実際はもっと長い年数を問題なく過ごされている方が大勢いらっしゃいます。

 

これからインプラント治療を受けてみようと検討されている皆さんにもぜひ「一生モノ」と言えるようなインプラントにしていただきたいと思いますので、セルフケアとプロのケアをしっかり続けていきましょう。

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