インプラント治療で用いるレントゲンの種類とは?歯科用CTの必要性についても解説
2025.09.04
顎の骨に部品を埋め込むインプラント手術において、手術前の検査は非常に重要となります。歯の内部をしっかり把握し、手術するにあたって問題がないか、骨の状態は良好か、などを確認するためです。歯の内部を詳細に把握してから手術内容や手順を決める目的もあります。
インプラント手術を行うにあたり、歯科医院ではどのような検査をするのか、人体に影響は出ないのか、検査をするとどんなことが分かるのか、詳細をお伝えしていきます。
インプラント治療に用いられる、おもなレントゲンの種類
インプラント以外の歯科治療でも必ず行われるレントゲン検査。歯の内部を確認するために必須となる検査です。このレントゲン検査、実は2種類あります。それぞれにどんな特徴があってどんな目的があるのか、ご説明します。
パノラマレントゲン
パノラマレントゲンとは、歯全体を1枚の画像に収めて撮影したものです。歯科医院に治療に行くと、治療台の目の前に貼り付けられていたり、モニターに画像が映されていることが多いと思います。
どんなレントゲン機械を導入しているかは各歯科医院で異なりますが、主に以下の2種類に分けられています。
- 回転断層パノラマX線装置:カメラが顔の周りを回って、上下の顎を1枚のフィルムに写す
- 口内線源パノラマX線装置:上下または左右の顎を、それぞれ別々に撮影する。全顎を撮るには、2枚のフィルムが必要
パノラマレントゲンは歯と歯根部分の全体像を把握するためで、治療したい箇所の細部まで確認するためには後述のデンタルレントゲンと併用します。
レントゲン写真は平面図(2D)であるため、奥行きや頭頂部からの視点、後頭部からの視点などまでは確認できず、インプラント手術に必須である骨の厚みや骨密度も把握することができません。
デンタルレントゲン
歯科治療用となるデンタルレントゲンは、パノラマレントゲンでは確認できなかった詳細な部分の撮影ができるレントゲン機械です。虫歯の深さ、根管の状態などを詳しく確認できます。
しかし、こちらもパノラマレントゲンと同じように奥行きまでは確認できないため、インプラント手術をする際には更に詳しい検査が必要となります。
歯科用CT
レントゲンは平面である2Dになりますが、CTは立体的に状態が把握できる3D画像になります。
レントゲンでは分からなかった奥行きや傾きなども確認できるため、顎の骨の状態を正確に把握する必要があるインプラント手術にはとても役立ちます。
CTを使用することによって最短距離で手術場所にアプローチすることができますので、手術時間の短縮にもつながり、痛みや腫れなども最小限に抑えることが可能になります。
ただ、検査費用はレントゲン検査よりも高額になります。相場としては1~3万円程度です。インプラントは全額自費となる自由診療ですので、CT検査も保険は適用されず、価格は歯科医院によってそれぞれです。
インプラント治療で行なうレントゲン撮影は安全?
体の内部を撮影するこれらの検査機器は、主にX線を用いています。X線というと放射能との関係を思い浮かべ、「被曝するのでは?」と思う人もいるかもしれません。
レントゲン検査やCT検査で使用するX線は日常生活で浴びている放射線量よりも低く、人体への影響はありませんのでご安心ください。
以下に放射線量の例を挙げます。
- 歯科用CTでの撮影:0.1ミリシーベルト
- 日常生活(自然放射線による日本での年間線量):2.1ミリシーベルト
- 飛行機への搭乗(日本〜NYを往復):0.08~0.11ミリシーベルト
インプラント治療の際に、レントゲンで確認するおもな項目
インプラント手術を行う前にレントゲンやCTで確認する項目を以下に挙げていきます。どれもインプラント手術を行うにあたって必ず確認しなければならない重要な項目です。
骨の幅(厚み)
背の高さや手の大きさが人それぞれであるように、顎の骨の大きさも人それぞれです。
インプラントの部品が埋められるだけの骨の厚みがあるか、どの大きさの部品を使用するのが最適か、などを判断するために顎の骨の厚みを確認します。
骨の高さ
骨の厚みと同じように、骨の高さもそれぞれであり、高さによって使う部品も変わってきます。最適な高さの部品を選ばないと、治療箇所周辺の神経や組織を必要以上に傷つけてしまうことにも繋がります。
骨の密度・形状
いわゆる「骨密度」もインプラントを埋める際に重要になります。必要以上の骨密度がない状態の歯にインプラントを埋めてしまうと、歯茎にインプラントがはみ出してしまったり、インプラントが抜け落ちてしまうリスクが高まります。
CT検査では骨密度も測定できるため、とても重要な検査になります。
パノラマレントゲン、デンタルレントゲン、CT検査によって、骨の厚み、高さ、密度以外の骨の特徴や形状も細かく確認していきます。
隣接する骨との距離
インプラント手術を行う箇所の骨以外にも、隣接する歯の歯根部分の形状も把握していきます。埋め込む部品が隣の歯の歯根にぶつからないようにするためです。
周囲の歯に影響のない正しい位置に埋め込むことで、噛み合わせに変化が出てしまうことも防げます。
インプラント治療のレントゲン撮影でわかること
インプラント手術を行う上でのレントゲン検査、CT検査によって調べる項目を以下にまとめます。
パノラマレントゲン、デンタルレントゲンでわかること
- 骨の長さ
- 歯の健康状態(虫歯や歯周病の有無)
歯科用CTでわかること
- 骨の幅(厚み)
- 骨の高さ
- 骨の密度・形状
- 神経・血管の状況
- 周囲の骨との関係
インプラント治療に歯科用CTは必須?
お伝えしてきたように、インプラント手術を行うときは2Dのレントゲン検査のみでは完全な情報は得られません。レントゲン検査のみでインプラント手術を行うことも可能ではありますが、CT検査を併用したほうがメリットが多く、手術もより安全に負担なく進めることができます。
CT検査をせずにインプラント手術を行う場合には、以下のようなリスクが考えられます。
- 骨の厚みの不足などによって金属部分が歯茎から露出する
- インプラントがしっかり定着せず、脱落してしまう
- 手術部位の傷の治りに時間がかかり、細菌感染が起こる
- 大きな神経を傷つけてしまい、痺れや麻痺などの後遺症が残る
手術前にできる限り正確に歯茎内部の情報を把握し、適切な大きさの部品を選び、無駄に組織を傷つけることなくスムーズに手術を終わらせることは、患者様の負担の軽減につながります。
本町通りデンタルクリニックは、大学病院と連携して検査結果がわかるまでに数週間かかるような症例でも、当院だけで対応することができる最新の検査機器を取り揃えております。
検査機器以外でも、術中の体の状態変化がわかる「生体モニター」や、止血効果が期待できる電気メス「バイポーラ」なども導入し、万全の治療環境を整備しています。
これらはすべて「患者様のご負担を最小限に、安全性の確保は最大限に」という理念によるものです。
まとめ
一般的な歯科治療で行うのはほとんどがレントゲン検査のみであり、インプラント手術を行っていなければ、CT検査機器を整備している歯科医院はあまり多くありません。
逆に、インプラント手術を行う歯科医院でしたら、CT検査機器を設置していることが多いでしょう。
手術が始まってから、「レントゲンではこんなに骨量が少ないようには見えなかった」「歯根がここまで傾いてることまでは確認できなかった」というような事態になってしまうのは、なにより患者様への負担やリスクが増えてしまいます。
安全で安心していただけるインプラント手術を行うには、やはりCT検査を行うことを当院では推奨します。体にメスを入れる大きな治療だからこそ、「まさかの事態」を可能な限り防ぐのが私たちの使命だと考えています。
レントゲン検査もCT検査も人体には悪影響の無い検査になりますので、安全な手術・治療を行うためにもぜひ検査機器を取り揃えている歯科医院をお選びください。