インプラント治療の基本的な流れは?手術方法の違いや治療期間も解説
2025.02.12
インプラント治療は、失った歯を補うための高度な歯科治療の一つです。インプラント体(人工歯根)を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着することで、自然な噛み心地や見た目を取り戻せます。
しかし、治療には複数のステップがあり、外科手術をともなうことから不安に感じる方も多いでしょう。
本記事では、インプラント治療の基本的な流れを解説するとともに、「一回法」と「二回法」の違いや治療期間の目安についても詳しくご紹介します。インプラント治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
インプラント治療の基本的な流れ
インプラント治療には、カウンセリングから施術後のアフターケアまで多くのステップがあります。自分のなりたい姿をイメージして伝え、治療の流れをしっかり把握することが、治療を成功させる鍵となるでしょう。
インプラント治療には「一回法」「二回法」という2種類の方法がありますが、本記事では、世界的に主流である「二回法」をベースに、治療の流れを詳しく解説します。
1.カウンセリング・問診
インプラント治療と一口に言っても、歯科医院によって方針や設備は異なります。納得のいく治療を受けるためにも、まずはカウンセリングを受けて十分な情報収集を行ないましょう。
カウンセリングでは、患者様の要望や悩みを聞き、口腔内を確認したうえで治療方針を説明します。同時に問診が行なわれることが一般的で、健康状態や既往歴、生活習慣などが確認されます。
特に、糖尿病や骨粗しょう症などの持病がある場合、インプラント治療が可能か慎重に判断されるため、正直に申告することが大切です。
最近では、オンライン相談や電話相談を実施している歯科医院も増えており、遠方の方でも気軽に相談できるようになっています。カウンセリングを通して、信頼できる歯科医院を選ぶことが、成功への第一歩となるでしょう。
2.術前検査
インプラント治療を安全に進めるには、術前検査が欠かせません。検査を怠ると、術後に問題が発生するリスクが高まります。術前検査では、患者様の全身状態や口腔環境を詳細に調べ、インプラントが適応できるか、どのような治療法が合っているかを判断します。おもな検査内容は以下のとおりです。
・血液検査:全身の健康状態を把握するために実施。血液や肝機能の状態、糖尿病などに罹患していないか、感染症の有無を確認する。
・口腔内検査:虫歯や歯周病の有無に加え、噛み合わせの確認も行なう。治療が必要な場合は、インプラント治療の前に処置を施す。
・レントゲン検査:残っている歯の状態や顎骨の厚みなどを確認し、インプラントを埋入できる十分な骨量があるかを評価する。
・歯科用CT検査:顎骨の詳細な構造を3D画像で確認し、神経や血管の位置を把握する。より正確な手術計画を立てるのに必要。
また、歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合、インプラントへの影響を軽減するためにナイトガード(マウスピース)の使用が推奨されることもあります。
これらの検査結果をもとに、最適な治療計画を立案し、手術の安全性を確保します。
3.治療計画の確認・契約
カウンセリングや検査の結果をもとに、歯科医院が治療計画を作成します。具体的なスケジュールや費用はもちろん、アフターケアやインプラントの保証制度の内容などもしっかり確認しましょう。
計画に納得できれば契約を結び、今後の治療の予約を取ります。不安が残る場合は、ほかの歯科医院に相談するのも一つの方法です。
4.一次手術(インプラント埋入)
一次手術では、インプラント体(人工歯根)を顎骨に埋め込みます。歯茎を切開し、顎骨にドリルで穴を開けて埋入する処置が行なわれますが、麻酔を使用するため手術中の痛みはほとんどありません。
手術時間は1~3時間程度で、日帰りが可能です。麻酔が切れるとじーんとした痛みが出てくるので、その際は痛み止めの薬を服用しましょう。
5.抜糸・仮歯調整
一次手術から約2週間後、傷口を塞いでいる糸を抜糸します。また、日常生活に支障が出ないよう仮歯の調整も行ないます。
仮歯を装着したあとはすぐに食事が可能ですが、あまり強く噛むとインプラント体の定着が悪くなる可能性があるため注意が必要です。
6.待機期間
インプラント体と顎骨が結合するまで、数ヵ月の待機が必要です。一般的には2~3ヵ月程度ですが、骨や治療箇所の状態によって異なります。インプラント治療で一番時間を要する時期ですが、焦りは禁物です。
次のステップに進む時期が来るまでゆっくり休養しましょう。待機期間中は通院する必要はありませんが、違和感や痛みが生じた場合はすぐに歯科医師に相談してください。
7.二次手術(アバットメント装着)
二次手術では歯肉を再度切開してインプラント体の状態を確認し、骨としっかり結合していればアバットメントというパーツを装着します。
アバットメントは、インプラント体と人工歯をつなぐ役割を果たすものです。手術時間は30分ほどで、日帰りが可能。完了後は歯茎が整うまで1~2週間待ちます。
8.型取り
人工歯を作成するための型取りを行ないます。シリコン印象材を口腔内に入れて硬化させる方法が一般的ですが、最近は専用スキャナーで3Dデータを取得する光学印象も多く採り入れられています。人工歯が完成するまでの間は仮歯を装着するため、食事や会話で困ることはないでしょう。
9.人工歯の装着
人工歯が完成したら、それをアバットメントに装着します。噛み合わせや形状、色などを確認し、問題がある場合は、すぐに歯科医師に伝えて調整してもらいましょう。併せてお手入れの方法も確認し、練習します
10.メンテナンス
人工歯を装着すれば治療は完了ですが、インプラントを長く維持するには定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスを怠ると、インプラントの破損や歯肉炎などのトラブルにつながるケースもあります。
毎日のブラッシングはもちろん、半年に1回以上の定期検診を受け、清掃や点検を行ないましょう。
インプラント治療における一回法と二回法の違い
インプラント治療における一回法と二回法の違いは、歯茎を切開する手術回数です。名称からもわかるとおり、一回法は1回、二回法は2回手術を行ないます。
「一度で済むほうがいいのでは?」と思うかもしれませんが、どちらが適しているのかは、患者様の口腔内の状況や健康状態によって異なります。
一回法は、インプラント体の埋入とアバットメント装着を同時に行なう方法です。外科手術が一度で済むため、患者様の負担が軽減されます。
治療期間が短く、費用も抑えられる点もメリットです。しかし、人工歯を装着するまでアバットメントの上部が露出した状態になるため、細菌感染リスクが高まります。また、骨や歯肉の状態によっては適応が難しい場合もあります。
二回法では、まずインプラント体を埋入し、一度歯肉を縫合します。一定期間(通常3~6ヵ月)待ち、再び歯肉を切開しアバットメントを装着するという流れになります。
骨量が少ないケースや、安全性を重視したい場合に適している方法です。また、人工歯と歯茎のラインをきれいに整えやすいメリットもあります。ただし、手術が2回必要なため、体に負担がかかったり、治療期間が長くなったりする点はデメリットといえるでしょう。
カウンセリング・検査・型取りなど、手術以外の基本的な流れは変わりません。一般的に、安全性の高さから二回法が主流ですが、症例によっては治療期間を短縮できる一回法が選ばれることも増えています。どちらの方法が適しているかは、歯科医師と相談のうえで決定しましょう。
インプラント治療にかかる期間
インプラント治療の期間は、インプラント体と顎骨が結合するのに時間がかかるため、比較的長くなる傾向があります。
患者様の口腔内の状態や歯科医師の方針にもよりますが、最短でも3ヵ月程度、平均的には6ヵ月程度が目安とされています。
さらに、骨の状態が悪い場合や追加の処置(造形手術など)が必要なケースでは、5ヵ月前後延長することも珍しくありません。
特に、虫歯や歯周病を抱えている人、骨が薄い人は治療期間が長くなる可能性があります。インプラント治療の詳細な期間については、歯科医師と相談し、患者様に合わせた計画を立てることが重要です。
【インプラント治療】歯がない期間の注意点
インプラント治療では、手術後や型取りのタイミングで歯がない期間が生じる場合があります。
その際は、仮歯を装着して日常生活への影響を最小限に抑えますが、あくまでも短期間の使用を目的としているため、気を付ければならないこともあります。ここでは、仮歯を着用する際の注意点について解説します。
仮歯に強い力を加えない
仮歯に強い力が加わると、仮歯の破損やインプラント部分への負担増加につながり、治療の進行に影響をおよぼす可能性があります。
仮歯は最終的に装着する人工歯ほどの強度がないため、硬い食べ物を食べたり、強く噛んだりするのは避けましょう。
粘着性のある食べ物は避ける
仮歯は最終的に外すことを考慮し、弱めの接着剤で合着しています。ガムやキャラメルなど粘着性のある物を食べると、仮歯が外れる可能性があるため避けたほうが無難です。
また、外れた際に破損したり、誤飲したりするリスクもあるため、注意しましょう。
口腔内は清潔に保つ
仮歯は歯と歯茎の境目に隙間ができやすいため、汚れが溜まりがちです。
そのまま放置すると細菌感染を引き起こす可能性があるため、食後はブラッシングをして口腔内全体を清潔に保ちましょう。仮歯や傷口に負担がかからないよう、やさしく磨くことも大切です。
まとめ
インプラント治療は失った歯を補える魅力的な治療です。しかし、治療期間が長く、費用もかかるため、悩みや迷いを抱える方も多いでしょう。
治療は、複数のステップを踏んで進められます。一回法と二回法の違いや、治療の流れをしっかり理解し、自分に合った治療法を見つけましょう。
治療期間は個人差があり、短い場合で3ヵ月、長い場合は1年以上かかることもあります。
また、治療後のメンテナンスを怠るとインプラントの寿命が縮まるため、定期的な検診も欠かせません。治療を成功させるためには、信頼できる歯科医院を選ぶことが重要です。
しっかりとした知識を持ち、適切なケアを行なうことで、インプラントを長く快適に使用することができるでしょう。