老後におけるインプラント治療のデメリットとは?メリットと注意点
2025.10.06
加齢とともに健康な自分の歯が少なくなってくるのが多くの人の悩みです。老年期に入って、「全部自分の歯です」と言える人のほうが稀で、金歯や銀歯、入れ歯の金具が口元に見える中高年の印象があると思います。
何歳になっても全部自分の歯でいられたらもちろんそれがベストではありますが、なかなかそうはいかないのが現実。
かといって「いかにも入れ歯」「いかにも義歯」な口元は避けたい……という方に、インプラントの選択肢が挙げられます。
インプラントは一見して人工歯だとは分からないほどの審美性があり、目立つ金具などもなく、ものがしっかり噛めるメリットもあります。
しかし、「老後にインプラントは良くない」といった噂を耳にして悩んでいる人もいるようです。
なぜ老後にインプラント治療を受けることが「良くない」のでしょうか?その噂の真偽とともに、老後にインプラント治療を受ける際の注意点などをお伝えしていきます。
老後におけるインプラント治療の4つのデメリット
確かに、老年期にインプラント治療を受けるからこそのデメリットは存在します。
まずはそれらについて具体的にご説明します。
外科手術を受けるために体力的な負担が生じる
インプラントとは、歯茎を切開して顎の骨に穴を開け、そこに人工歯根を埋め込む治療のことです。歯科治療の中では最も大がかりな治療のひとつとも言え、例えば1本のみのインプラント手術でも1時間程度の手術時間を要します。
全身麻酔を使用するような外科手術よりは体への負担は少ないですが、免疫力や回復力、治癒力が若年層に比べて劣る高年層がインプラント手術を受けるリスクはゼロではありません。
細菌感染のリスクが生じる
インプラント手術は、切開した部分から細菌が入り込まないよう、もちろん万全の態勢で行います。
しかし、先ほどお伝えしたように、若年層に比べて免疫力の劣る高年層には多少の不安が残るのが実際のところです。
手術後には細菌感染を防ぐために抗生物質を服用していただき、ほとんどの患者様が問題なく綺麗に傷口が塞がりますが、高年層の患者様ですと抗生物質を飲んでいても感染が抑えきれない可能性があります。
そして傷口が塞がり、インプラント治療が終了したあと、最も気をつけなければいけないのは「インプラント周囲炎」です。インプラント周囲炎とはインプラント特有の歯周病で、部品と歯茎の隙間から細菌が侵入すると顎の骨まで細菌が到達し、骨を溶かしてしまう怖い病気です。
免疫力の低い高年層は、このインプラント周囲炎にもより一層気をつけなければいけません。
関連記事:インプラントの歯周病「インプラント周囲炎」とは?おもな症状や原因、予防法などを徹底解説
継続的なケアやメンテナンスが難しいと感じる恐れがある
さきほどのインプラント周囲炎を防ぐには、第一に「口内の清潔を保つこと」です。日々の丁寧な歯磨きや、インプラント治療を受けた歯科医院での定期的なメンテナンスがとても重要となります。
高齢の場合、例えば病気や認知症などで日々の歯磨きがしっかり行えなくなるケース、定期メンテナンスに通うことが困難になってしまうケースも考えられます。
もちろん、病気になる可能性は年齢を問わず誰でもあります。しかし、確率的にはどうしても中高年期に体調を崩すケースが多くなりますので、その事実も頭に入れておいたほうが無難と言えるでしょう。
インプラント治療が受けられるとは限らない
高齢者の方が治療を受ける上でのリスクは残念ながら多少なりとも発生してしまう他に、そもそも「治療が受けられない」という可能性もゼロではありません。
顎の骨に金属製の部品を埋め込むインプラント治療は、前提として「部品が埋められるだけの大きさと強さのある骨であること」が求められます。
特に女性は更年期を境に骨密度が一気に低下し、骨粗しょう症になってしまう人も少なくありません。
スカスカになってしまっている骨には部品をしっかり固定することができないので、インプラント治療が受けられない、ということになります。
また、歯周病も骨を溶かしてしまう病気ですので、歯周病が進んでしまっている方も同じ理由で治療不可ということがあり得ます。
ただし、歯科医院によっては「骨造成手術」を行い、骨密度を高め、歯を補強できる処置が行えるところもあります。
骨の密度や大きさが足りないと一度断られてしまっても、他の歯科医院では処置が可能ということもありますので、複数の歯科医院でヒアリングを行ってもらうことをおすすめします。
関連記事: インプラント治療ができない人の特徴とは?対処法や代替治療法も紹介
老後におけるインプラント治療の5つのメリット
老年期にインプラント治療を受けるには、確かに若年層よりもリスクが上がる部分もありますが、老年期にインプラントにするからこそのメリットがあることも確かです。
噛む力を維持できる
まずいちばんに挙げられるのは、咀嚼力です。
「すべて自分の歯で、全部健康で何の問題もない」という人のほうが少なくなってくる老年期。ブリッジや入れ歯などが入っているせいで、ものがしっかり噛めないというお悩みを抱えている人も多いと思います。
しかし、食事において咀嚼は非常に重要で、よく噛まずに飲み込んでしまうと消化器官に負担がかかったり、食べられるものが限られたりすることも栄養の偏りに繋がります。
また、顎の骨に限らず、「骨は刺激が与えられることで強くなる」という特徴がありますので、固いものを避けて柔らかいものばかりを食べ続けてしまうと、顎の骨がどんどん弱くなっていってしまいます。
インプラントにした場合、本来の噛む力を8割~9割ほど再現できますので、しっかりと咀嚼することができ、体全体の健康に繋がっていくという大きなメリットがあります。
食事や会話を楽しめる
何も気にすることなく、好きな食べ物を食べて健康にいい食生活が送れることは、「人生の楽しさ」に繋がります。
友人との食事や旅行先でのグルメなど、何も気にすることなく楽しめるメリットは大きいと言えます。
また、入れ歯などが合わずに「発音がしにくくなった」と悩んでいる人も少なくありません。インプラントはフックで引っ掛けてあるだけの入れ歯とは固定方法が全く異なるため、発音にも支障が出にくい特長があります。
「入れ歯のにおいが気になる」「うまく喋れない」という理由から、人と話すのが苦手になってしまった方にこそ、インプラントはおすすめの治療法と言えます。
認知症リスクの低減につながる
先ほど「骨は刺激が与えられることで強くなる」とお伝えしましたが、ものをしっかり噛むことは脳にもいい刺激が伝わります。
どんな食材でもしっかり美味しく味わえることは、視覚や味覚、嗅覚にもいい影響がありますので、認知症リスクの低減にも繋がると言えます。
誤嚥性肺炎の予防につながる
誤嚥性肺炎とは、飲み込んだ食べ物や飲み物、唾液が食道を通り過ぎたあとに胃に流れるのではなく、気管支に流れてしまい、そのせいで肺炎になってしまうことを指します。
高齢者の死亡原因でよく「肺炎」と説明されることが多くありますが、それはこの誤嚥性肺炎のケースがほとんどです。
食べ物や飲み物、唾液を飲み込んだあとに、それを食道に運んでいく力が衰えてしまっているため、間違えて気管支に侵入し、肺に細菌が蔓延して炎症を起こしてしまいます。
飲み込む力が弱いという理由と共に、清潔に保たれていない入れ歯などに細菌が多く溜まっているせいで、炎症が悪化しやすいという側面もあります。
インプラントは定期メンテナンスを継続的に受けていることで口腔内の清潔が保たれていますので、もし気管支に何かが侵入してしまった場合でも細菌が少ないために誤嚥性肺炎になりにくいというメリットがあります。
外見を若々しく保ちやすくなる
特に前歯部分に入れ歯を入れると、「出っ歯」のような印象になってしまうケースが少なくありません。
入れ歯に使われている人工歯も、保険適用内の硬質プラスチックを選ぶと、人工歯であることは明らかです。人と話すときに歯や金具が見えると、「入れ歯を入れているんだな」ということは明確です。
インプラントは一見して天然歯と変わらない審美性がありますし、不自然な口元のふくらみもありませんので、「人工歯」であることはほとんど判別がつきません。
どうしても「入れ歯=お年寄り」という印象がありますので、自分の歯を綺麗なまま保てているように見えるインプラントは、若々しい印象を与えることができます。
老後にインプラント治療を検討する際の4つの注意点
高齢者がインプラント治療を受ける際、確かにリスクは存在しますが、同時に多くのメリットもあります。
「入れ歯よりもインプラントにしてみたい」と考えている高年層の方に、インプラント治療を受ける際の注意点をお伝えします。
信頼できる歯科医院を選ぶ
これは年齢にかかわらず、インプラント治療を受ける方全員に言えることですが、最も重要なのは「信頼できる歯科医院をしっかり選ぶこと」です。
インプラント治療は一般的な歯科治療とは違う専門知識や経験が必要なため、「近所の歯科医院でいいや」と安易に決めてしまうと、のちに後悔に繋がってしまうことにもなりかねません。
先ほどお伝えしたように、特に高齢者は骨があまり丈夫ではない人が多いため、「インプラント治療が受けられるかどうか」の判断は慎重に行う必要があります。
骨の状態を正確に把握できるような歯科用CT検査機器が導入されているか、インプラント治療の実績はどれくらいあるのか、治療後の定期メンテナンスに通いやすい立地にあるかなど、様々な視点で複数の歯科医院を比較し、条件に合ったところを選びましょう。
関連記事:インプラント専門医・歯科医院の選び方とは?押さえておきたいポイント11選を徹底解説
かかりつけ医に相談する
インプラントは外科手術を伴う治療です。歯茎を切開して顎の骨を削る手術を行いますので、持病をお持ちの方はまず、かかりつけ医に「インプラント手術を受けたい」旨を相談してください。
細菌感染しやすく、血が止まりにくい性質を持っている糖尿病や歯周病の方は、特に注意が必要です。
手術の際にいくつかの点に注意すれば手術を受けても問題ないと判断されることもありますし、安全が保証できないので手術はあまりおすすめしないと言われるケースもあります。
病状の度合いによって判断が分かれますので、持病がある方はまずかかりつけ医に相談しましょう。
関連記事:インプラント治療は糖尿病でもできる?リスクや対策を解説
治療の際は持病や治療歴を正確に伝える
持病がある方はかかりつけ医に相談すると同時に、インプラント治療を受ける歯科医院の歯科医師にも相談・報告が必須です。
糖尿病や高血圧の方はもちろん、他の持病でも治療前に必ず歯科医師に正確にお伝えください。常用薬がある方は、おくすり手帳を持参して歯科医師に提出するとスムーズです。
「まだ病気と確定したわけではないけど何かしらの体調不良を感じている」という場合でも、念のため歯科医師に報告しておくことが肝心です。
治療後の通院メンテナンスや口腔ケアをしっかりと行なう
インプラントの治療が終わったあとは、定期メンテナンスにしっかり通い続けることも、口腔内の健康を守っていくために非常に重要です。
インプラント周辺は特に細菌の影響を受けやすいため、歯磨きは毛先の柔らかい歯ブラシを使って細かく丁寧に磨いて衛生をキープします。
しかし、インプラント部分は歯ブラシでは届かない部分もあります。
埋め込んだネジの状態、インプラント周囲炎の兆候は出ていないか、磨き残しは無いかなど、自分では確認できない箇所があるからです。
特に高齢者は骨の状態が不安定なため、埋め込んだ部品にグラつきが出ていないか、傾きが無いか、そのせいで噛み合わせに不具合が出ていないかなどもしっかり確認する必要があります。
せっかくインプラント治療を受けても、定期メンテナンスを怠るとインプラントが抜け落ちてしまったり、顎の骨に異常が出たりして他の歯にもそれが影響してしまうケースなども考えられます。
インプラントは他の治療法よりも耐用年数が長いこともメリットのひとつです。定期メンテナンスにしっかり通って少しでも長く快適にお使いください。
関連記事:インプラントのメンテナンスにかかる費用とは?相場や必要性も解説
インプラント治療以外で老後の歯を補う治療法
中には、「やはり骨の状態に不安がある」とインプラント治療を受けられない患者様もいらっしゃいます。
その場合、インプラント以外にどんな治療法があるのか、ここで改めてご説明していきたいと思います。
入れ歯
抜歯した後に人工歯を入れる方法として多くの高齢者の方が選択するのが、入れ歯です。
部分入れ歯は両隣の歯にフックを引っかけて人工歯を固定し、総入れ歯はすべての歯を抜歯したあと人工歯と歯茎を専用の接着剤で固定させます。
ご自身での取り外しが可能なので、お手入れは入れ歯を外して入れ歯専用の洗浄剤を使います。
保険が適用されるので5,000円~2万円程度で治療が受けられ、治療期間も1~3ヶ月程度で完了するので、多くの患者様が選択する治療法です。
デメリットとしては、咀嚼力が弱くなること、食事中にズレやすいこと、毎日取り外して洗浄する手間がかかることなどが挙げられます。
関連記事:インプラントと入れ歯の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを8つの観点から全解説
差し歯
差し歯は他の治療と唯一違う点があります。歯根に部品を差し込んで人工歯と繋げる治療法なので、前提として「自分の歯根が残っている」必要があります。
つまり、人工歯をしっかり支えられるだけの強い歯根が残っていなければ選択できません。
治療期間は入れ歯と同じくらいで、人工歯の素材をセラミックなどの保険適用外のものを選択すれば、自分の歯と変わらない見た目になります。
関連記事:インプラントと差し歯どっちがいい?メリット・デメリットを解説
ブリッジ
ブリッジは、抜歯した箇所の両隣の歯を削り、そこを土台として人工歯を置く治療法になります。
差し歯と同じように、人工歯をセラミックなどにすれば見た目は天然歯とほぼ変わらない美しさがありますし、入れ歯よりも安定度があります。
一方で最も大きなデメリットは、「健康な両隣の歯まで削らなくてはいけない」ことです。
被せ物をしたせいで、隙間から細菌が侵入して結局両隣の歯も虫歯に……というケースも少なくありません。
関連記事:歯を失った際、インプラント治療以外の選択肢はある?4つの治療法を7項目で徹底解説
まとめ
老後にインプラント治療を受ける際の注意点などをまとめてお伝えしました。
若年層に比べてどうしても骨が脆くなりがちな老年期は、確かにインプラント治療を受けるにあたって多少のリスクや留意点が増えます。
しかし、逆に「老年期だからこそインプラントがおすすめ」という考え方もできます。
「持病もあるし、インプラントはさすがに……」と諦めてしまう前に、まずはインプラントを希望していることをかかりつけ医や歯科医院にご相談ください。
骨を補強する骨造成処置に長けている歯科医院もありますし、多くのご高齢の患者様のインプラント治療を行ってきた実績を持つ歯科医院もあります。
本町通りデンタルクリニックも、その中のひとつです。
ご年齢にかかわらず、骨があまり強くない患者様の治療実績を多く持っている歯科医院であれば、その処置方法も熟知しています。
歯の健康は体全体の健康に直結しているとも言えますので、入れ歯が合わなくて食事がしんどいというお悩みをお持ちの方など、ぜひ一度本町通りデンタルクリニックまでご相談ください。