ジルコニアインプラントを選ぶメリット・デメリットは?費用や注意点も併せて解説
2025.09.04
歯を失った人にとって選択肢のひとつでもある、インプラント。その機能性や審美性の高さは、入れ歯やブリッジに無いメリットがあります。
そのインプラントの中で、「ジルコニアインプラント」という種類があるのをご存知ですか?歯科治療に用いられるようになってまだそれほど長い歴史はありませんが、チタン製のインプラントよりも優れている点がいくつかあります。
「ジルコニアインプラント」とは何なのか、その詳細とメリット・デメリットについて詳しくお伝えしていきます。
ジルコニアインプラントとは?
ジルコニアインプラントとは、ジルコニアという素材でできている人工歯根(インプラント体)と支台部(アバットメント)のことになります。
インプラントは、人工歯根を顎の骨に埋め、アバットメントと呼ばれる繋ぎ部分を歯茎に露出させ、そこに人工歯を装着する仕組みになっています。
このインプラント体とアバットメントは、一般的にはチタンという金属の素材でできています。チタンは人体親和性が高く、骨や歯茎と結合しやすいからです。また、金属アレルギーが出にくいことも、インプラントにチタンが使用されている理由の一つです。
ジルコニアというのは、酸化ジルコニウム(ZrO2)を主成分とするセラミックの一種になります。セラミック系素材の中で最も硬く、人工ダイヤモンドとも呼ばれているほどです。チタンと同様に生体親和性が高いので、インプラントの素材として使用することができます。
インプラント体ではなく、被せ物のほうでも「ジルコニア」という素材の名前を聞いたことがあるかもしれません。「ジルコニア」と呼ばれる被せ物は透明度が低く、ほぼ真っ白の見た目をしている一方で、「ジルコニアセラミック」と呼ばれる素材のほうは透明度が高く、天然歯と変わらぬ見た目をしています。
インプラント体のほうで使用されるのは、前者の真っ白な「ジルコニア」のほうになります。
関連記事:インプラントの素材の種類とは?パーツ別に各素材のメリット・デメリットを紹介します
ジルコニアインプラントとチタンインプラントの違い
チタンは金属、ジルコニアは陶器、という点がまず最も大きな違いになります。その他の両者の違いを挙げていきます。
チタンインプラントは、インプラント治療以外にも医療用に使う金属として長年の実績があり、その安全性が証明されています。
しかし、インプラント治療にチタンを使用する際には多少のデメリットもあります。金属アレルギーの出にくい金属ではありますが、アレルギーが出てしまう可能性はゼロではありません。また、銀色のため、前歯など歯茎の薄い箇所に使用すると金属の色が透けて見え、歯茎が黒っぽく見えてしまうことがあります。
その点、ジルコニアは歯の色に似た白色ですのでそのような心配はなく、金属ではないので金属アレルギーが出てしまうリスクもありません。
ジルコニアインプラントを選ぶメリット
インプラント治療をする際に、一般的なチタンではなくジルコニアインプラントを選ぶメリットについて解説していきます。
金属アレルギーが発生しない
いちばんのメリットと言えるのは、やはり「金属アレルギーが起こらない」点でしょう。
チタンは金属の中ではアレルギーを起こしにくい素材ではありますが、やはり金属は金属です。金属アレルギーをお持ちの方が、インプラントを埋めてしまってから金属アレルギーが出てしまい、再手術という事態も「絶対にない」とは言えません。
陶器製であるジルコニアインプラントを選択すれば、そのリスクを回避することができます。
身体に優しい
先ほどお伝えしたように、ジルコニアは生体親和性が高く、安心して使用できる素材です。骨としっかり結合しやすく、人体に対する拒絶反応も起こりにくいので、安心して治療を受けられます。
強度が高い
人工ダイヤモンドと呼ばれるほどの強度があるので、しっかりものを噛むことができます。耐久性にも優れていますので、長期間使用できることも大きなメリットです。
審美性が高い
メタリックな銀色をしているチタンとは違い、セラミックは真っ白ですので、歯茎から透けても黒ずんで見えたりすることがありません。特に前歯部分は歯茎が薄いので、インプラントにすると部品が透けて黒ずんだように見えることがありますが、ジルコニアはそのような心配がありません。
プラークが付着しにくい
ジルコニアはチタンに比べると、プラーク(歯垢)が付着しにくい素材です。プラークはインプラント周囲炎に繋がるリスクが高まりますので、インプラント治療を行った箇所は特にしっかりブラッシングしてプラークを取り除いておきたい部分です。
もしプラークが付着しても、定期メンテナンスの際のクリーニングで落としやすいという長所もあります。
電磁波の影響を受けにくい
スマートフォンやパソコンなどの電磁波が多く飛び交っている現代には、電磁波過敏症という症状も確認されています。電磁波過敏症の主な症状は皮膚がチクチクする、めまい、吐き気などです。
チタンは金属なので、電磁波を集める性質を持っています。その点、ジルコニアは陶器ですので、その懸念がありません。
ジルコニアインプラントを選ぶデメリット
チタンよりジルコニアを選ぶメリットがある一方で、デメリットもいくつか存在します。
治療費が高い
インプラントは保険適用ができない自由診療である上に、検査代、手術台、部品代などの費用がかなり高額になります。そこに加えて、チタンインプラントではなくジルコニアインプラントを選ぶと部品代が更に高くなる傾向があります。
日本では製造が承認されていないので、海外から輸入するコストなどがかかっている背景もあります。
顎骨に対する負担が大きい
ジルコニアは非常に硬度の高い素材であると先ほどお伝えしましたが、硬度が高すぎるゆえに顎の骨へ負担がかかる側面もあります。
噛み合わせの際に当たる他の歯にも影響が出る可能性も考えられます。
ジルコニアインプラントをご希望の場合は、患者様の顎の骨の強度や、他の歯の状態を見ながら慎重に検討していく必要があります。
症例によっては対応できない
ジルコニアインプラントはチタンインプラントより歴史が浅く、予後のデータもまだ多くありません。患者様に持病があるなど、健康状態によってはジルコニアインプラントをおすすめできないケースもあります。
上部構造の選択肢が限られている
インプラント治療で使用されている部品はやはりほとんどがチタン製で、ジルコニアインプラントを開発しているメーカーは限られています。
チタン製の部品でしたらいろいろなメーカーからお選びいただけますし、対応している人工歯(被せ物)も多岐にわたっています。
しかし、ジルコニアインプラントに対応できる被せ物もあまり多くなく、インプラント体・アバットメント・被せ物共に、選べる種類が限られてきます。
ジルコニアインプラントの費用
チタンインプラントに比べて部品代が高くなる傾向のあるジルコニアインプラントですが、具体的には40~60万円程度になります。
チタンインプラントは30~50万円程度が相場と言われていますので、10万円程度のアップとなります。
これらはあくまで相場ですので、歯科医院ごと、患者様の口腔状況ごとに費用には変動があります。治療に入る前に歯科医院に見積りを依頼して、ご予算としっかり見比べるようにしましょう。
ジルコニアインプラントの注意点
ジルコニアインプラントをご検討されている場合に、気を付ける注意点を以下にまとめます。
信頼できる歯科医院・歯科医師を選ぶ
インプラント手術・治療は一般的な歯科治療に比べて、より専門的な知識・技術が必要とされます。そしてチタンインプラントよりジルコニアインプラントのほうが更に高度なスキルが要求されますので、慎重に歯科医院を選びましょう。
ジルコニアインプラントを選択する患者様のほうが圧倒的に少ないので、経験のある歯科医師も限られてきます。その歯科医院でジルコニアインプラントを使用した実績があるかどうか、どのようなメーカーを扱っているか、しっかり確認しましょう。
メーカーごとの違いを確認する
現在、日本国内で選べるジルコニアインプラントのメーカーはスイス製やドイツ製が主流です。同じジルコニアでも、メーカーによって性能や強みは異なります。
歯科医師にその違いを確認して、ご自身の口腔状況や要望に合わせたメーカー選びが重要となります。
定期的なメンテナンスを怠らない
これはチタン製、ジルコニア製、どちらにとっても同じですが、インプラント治療を終えたあとは定期的なメンテナンスが欠かせません。
インプラント治療箇所は「インプラント周囲炎」というインプラント特有の歯周病にかかりやすいリスクがあります。
インプラント周囲炎は初期の頃には自覚症状が表れにくく、痛みや出血が始まってからではかなり症状が進行しているケースも多くあります。できるだけ早めに異変を察知するためには、定期的なメンテナンスが必須となります。
関連記事:インプラントの歯周病「インプラント周囲炎」とは?おもな症状や原因、予防法などを徹底解説
インプラント周囲炎は歯垢に溜まった細菌が原因で発症するため、自分の歯と同じように、日々の歯磨きも歯間ブラシやフロスを使うなどして、隅々までしっかり丁寧に行いましょう。
費用が安すぎる歯科医院は避ける
こちらもチタン製、ジルコニア製、共に言えることですが、費用面でインプラント治療を受けることをためらっている方は、つい「とにかく安いところ」を探しがちです。
しかし、相場よりもあまりにもかけ離れた金額でインプラント治療を行っている場合は、品質の劣る部品を使用していたり、あまりスキルや経験のない歯科医師だったりする可能性があります。
チタン製よりもジルコニア製のほうが高くなるという背景も加わって低価格の歯科医院に目が行ってしまうかもしれませんが、費用面のみで決めずに、安全性・信頼性などを軸にして歯科医院を選びましょう。
関連記事:インプラント手術を失敗しないために
インプラント専門医・歯科医院の選び方とは?押さえておきたいポイント11選を徹底解説
まとめ
インプラント治療の中で「ジルコニアインプラントと呼ばれるものの詳細と、メリット・デメリットをお伝えしました。
チタン製のインプラントは充分に安全性が確立され、価格もジルコニアインプラントより抑えられるため、ほとんどの患者様がチタンインプラントを選択されます。
しかし、金属アレルギーをお持ちの方や、前歯をインプラントにする方など、少しでもリスクや不安を抑えたいという考えをお持ちの患者様には、ジルコニアインプラントという選択肢があります。
まだ日本ではジルコニアインプラントに関する症例も少なく、対応できる歯科医院も多くはありませんが、せっかく高い費用を払ってインプラント治療を受けていただくなら、少しでも不安なく治療を受けていただきたいと思います。
本町通りデンタルクリニックでは、ジルコニアインプラントに関するお問い合わせやご相談も承っております。「自分にはジルコニアインプラントのほうがいいかもしれない」という方は、ぜひ当院までお声がけください。