インプラントは虫歯になる?治療後の口腔トラブル&メンテナンス方法

2025.07.15

 

入れ歯、ブリッジなどに比べて機能性や審美性の高いインプラントは、その人気が年々高まっています。

 

両隣の歯を削らなくてはいけないブリッジや、金具が目立つ入れ歯よりもインプラントにしてみたい、と検討している人にとって、インプラントの虫歯リスクも気になるところだと思います。

 

インプラントにした場合、想定される口腔トラブルや気をつけるべきポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。

 

虫歯リスクの詳細と共にお伝えしていきます。

インプラントが虫歯にならない理由

まず、インプラントは人工歯ですので、天然歯のような虫歯にはなりません。

 

「虫歯」とは、天然歯が溶けたり黒ずんだりする状態を言います。

 

私たちが食べ物を口にすると口の中は酸性になり、歯の表面のエナメル質が酸によって溶けやすくなります。

 

歯磨きを怠たりプラークがたまったままにしておくと酸性の状態が続き、虫歯が進行します。

 

そのため、日々の歯磨きで食べカスやプラーク(歯垢)をしっかり取り除くことが、虫歯予防には欠かせません。

 

インプラントに使用される義歯の素材はセラミックやジルコニアなどが主流です。それらは溶けたり黒ずんだりすることはありません。

インプラント治療後に起こり得る口腔トラブル

「じゃあ、インプラントにすれば歯磨きを雑にしてしまっても問題ないの?」と思うかもしれませんが、決してそうではありません。

 

インプラントにしたからこその注意点があります。

インプラント周囲炎が発生する

インプラントとは、歯茎を切開して顎の骨を削り、その穴にインプラント体と呼ばれる人工歯根を埋める手術・治療のことを指します。

 

インプラント体にアバットメントという柱を繋ぎ、歯茎に露出させ、そこに人工歯を被せるのがインプラントの構造になります。

 

 

金属の部品を埋め込むということで、天然歯よりも歯茎の隙間から細菌が侵入しやすい環境になります。

 

「インプラントは虫歯にならないから」と歯磨きを雑に行ったり怠ったりすると、人工歯の周囲に付着したプラークから細菌が侵入し、歯周病を発症してしまいます。

 

これを「インプラント周囲炎」と呼びます。

 

 

インプラント周囲炎になってしまうと、痛み、腫れ、出血を伴い、症状が進むと骨が溶けてインプラントが抜け落ちることにも繋がってしまいます。

 

つまり、人工歯部分が虫歯になることはないものの、天然歯と同じようにしっかりとプラークを除去しないと口内トラブルになってしまう点では同じ、ということです。

 

関連記事:インプラントの歯周病「インプラント周囲炎」とは?おもな症状や原因、予防法などを徹底解説

インプラント周辺の自然歯が虫歯になる

インプラントの人工歯部分は虫歯にならないとしても、隣り合う天然歯はもちろん虫歯になる可能性を抱えています。

 

歯間ブラシやデンタルフロスを使って、インプラントと隣接している隙間のプラークもしっかり除去しましょう。

歯茎の腫れ、出血が起こる

インプラント手術は外科手術ですので、手術部位にしっかりと麻酔をかけていきます。

 

麻酔が切れれば患部に痛みを感じますが、処方される痛み止めを数日間飲んでいればそれほど支障がない程度の痛みです。

 

よく「親知らずを抜いたので顔が腫れてしまった」という話を聞くと思います。親知らずの抜歯よりもインプラント手術のほうが、腫れる患者様が少ないように感じます。

 

しかし、痛みや腫れ、出血が数週間引かない場合は、何かトラブルが起きている可能性が考えられますので、すぐに歯科医院に連絡し、受診することをおすすめします。

インプラントの破損や脱落

インプラント治療において最も重要なのは、インプラント体と骨の結合です。

 

インプラント体を埋め込んでからしばらくの間は、骨との結合を待つ待機期間が設けられます。

 

ほとんどの場合は問題なく結合し、治療完了となりますが、患者様の体質や噛み癖、歯科医師の技量不足などにより、待機期間を経ても結合しないケースが稀にあります。

 

結合するまでは患部で硬いものを噛んだりせず安静に過ごすこと、歯ぎしり癖のある人はマウスピースを作成するなどして、結合を妨げないようにすることが大切です。

 

また、インプラントは高い技術が必要な難しい治療です。

 

インプラント治療を受ける歯科医院を選ぶ際は、実績豊富で信頼のおける歯科医院を選ぶようにしましょう。

 

関連記事:インプラント専門医・歯科医院の選び方とは?押さえておきたいポイント11選を徹底解説

あごの骨によるトラブル

治療してしばらくは問題なく過ごせていたとしても、その数年後にインプラントがグラついてくることが稀にあります。

 

原因として、加齢などにより顎の骨が痩せてしまったことが考えられます。

 

先ほどお伝えしたインプラント周囲炎も、症状が進行すると顎の骨が溶けてしまうのでインプラントの抜け落ちに繋がります。

 

また、喫煙習慣も骨や歯茎に悪影響を及ぼすため、インプラント脱落のリスクがあります。

インプラントを長持ちさせるためのメンテナンス方法

 

では、上記のようなトラブルを防ぐには、どうすればいいのでしょうか。

 

ご自身の対応次第でトラブルを避けることは大いに可能です。

 

ここでは、できるだけ長く快適に使うためのポイントなどをいくつかご紹介していきます。

そもそもインプラントの寿命は何年?

インプラントの寿命は、一般的に10~15年程度と言われています。しかし、多くの方がそれ以上の長い年数を問題なく使い続けています。

 

ちなみに、ブリッジの寿命は7~8年程度、入れ歯は4~5年程度が寿命となります。

 

この耐用年数の長さもインプラントの大きな利点と言えます。

 

関連記事:インプラントの寿命がきたら?平均寿命や不具合の原因と予防策、対処法を解説

インプラントの正しい歯磨き方法

インプラントを長く使い続けるには、まず日々の歯磨きが最も重要です。

 

手術後2週間ほどは専用の歯ブラシを使用すると、患部への刺激が少なくなります。歯科医院でおすすめのものを紹介してもらいましょう。

 

専用歯ブラシでなくても問題はありません。毛先の柔らかい素材のものを選び、小刻みに動かして丁寧に磨いていきましょう。

 

ヘッドは小さくて薄いものを使うと小回りが利くので、隅々までブラシが届きやすくなります。

 

インプラント箇所に限らず、歯磨きは歯と歯茎の間、歯と歯の間を重点的に磨いていくことがコツになります。

 

超音波式の電動歯ブラシもおすすめです。手動でゴシゴシと動かす必要が無く、目に見えない微細な振動で、しっかりと隙間に入り込んでプラークを浮き上がらせます。

 

また、手動の場合でも電動歯ブラシでも、歯間には歯ブラシの先端が入り込みにくいので、歯間ブラシやデンタルフロスを使用するといいでしょう。

 

使用するタイミングとしては、歯ブラシ前がおすすめです。歯間ブラシやフロスで食べカスやプラークを除去し、フッ素入りの歯磨き粉を使ってブラッシングをするとフッ素が全体に浸透しやすくます。

歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける

インプラント治療を受けた方には歯科医院から「定期メンテナンス」の案内があります。

 

先ほどお伝えしたインプラント周囲炎は、初期の段階では自覚症状が無いことが少なくありません。痛みや出血などが出てきてから歯科医院を受診しても、かなり進行してしまっているケースがあります。

 

インプラント周囲炎を早期発見するためには、定期メンテナンスが必ず必要です。

 

その他にも、定期メンテナンスではクリーニングや噛み合わせ調整なども行い、インプラントを含めた歯全体を常に最善の状態にしておくために、必要不可欠なケアになります。

 

また、定期メンテナンスが重要な理由に、「無料保証の対象になるから」というものもあります。

 

万が一インプラントに不具合が出たときに「無料保証」を付帯している歯科医院が多くあります。しかし、無料で再治療を行う際の条件に「定期メンテナンスに通っている人」と指定がされていることが多くあり、当院も同様です。

 

インプラント治療が終わって数年後に何か不具合が出た時に、また高い治療費を支払うことにもなってしまいますので、定期メンテナンスには必ず通っておくようにしましょう。

 

関連記事:インプラントのメンテナンスにかかる費用とは?相場や必要性も解説

インプラント治療後のアフターケアとは?寿命を延ばすケア方法を全解説

生活習慣を見直す

インプラントを長く使い続けるには、生活習慣を見直すことも大切です。

 

まず喫煙は血の巡りを悪くするので、インプラントには悪影響です。喫煙習慣のある人は禁煙をするか、量を減らすことをおすすめします。

 

インプラントに限らず、歯の健康を考える上で大切なのはやはり「虫歯を作らない」ことです。

 

虫歯の原因に直結する「酸」や「糖分」を摂取しすぎず、口内をできるだけ清潔に保てるように気をつけながら生活しましょう。

 

そもそもインプラントを選択した理由として「抜歯になるほどの深い虫歯があったから」という人が多くいらっしゃいます。

 

インプラントは自分の歯のように噛めるところ、自分の歯のように見える美しさが非常に大きな利点ではありますが、そうは言っても自分の歯にかなうものはありません。

 

1本でも多く自分の歯を残して、年齢を重ねても自分の歯で健康的に過ごせることがいちばんです。

 

そのためにも、歯に悪影響のある生活習慣はできるだけ避けるようにしましょう。

インプラント治療時に虫歯が見つかったときの対処法

 

インプラント治療を受けたくて歯科医院を受診した際に、他の歯に虫歯が見つかった場合はどのような流れで治療を進めるでしょうか。

 

一般的には、先にすべての虫歯を治療し終わってからインプラント治療に入ります。

 

インプラント手術を行う際に、虫歯菌によって細菌感染を引き起こすリスクがあるからです。

 

歯科医院によっては、他の虫歯治療と、インプラント手術を行うための事前検査を同時に行って治療期間を短くするなどのスケジュールを組むところもあるかもしれません。

 

あまり長い期間通い続けることが難しい人は、その要望を担当歯科医師に伝えてみましょう。

まとめ

インプラントの人工歯部分が虫歯になることはなくても、歯茎や骨がインプラント周囲炎にかかってしまうおそれがあるので、歯磨きは丁寧に行いましょう。

 

虫歯が深い時に、「神経を除去する」という処置を行います。抜歯まではいかずとも、神経も虫歯菌に侵されているので歯根の中に通っている神経部分を削り取る処理です。

 

その上から銀歯や硬質プラスチック(レジン)のかぶせものをして仕上げていきます。

 

この場合も「神経がなければもう痛みを感じることもない」と判断し、歯磨きを雑に行う患者様がいらっしゃいます。

 

歯というのは、神経を失うと一気に脆くなります。ここで「痛みを感じないなら」と歯磨きを怠ってしまうと、せっかく残した歯根も結局抜歯になってしまうことが少なくありません。

 

人工歯根よりは自分の歯根のほうが、神経が無いよりもあったほうが歯の健康を守れます。

 

年齢を重ねてもずっと自分の歯で生活していけるように、インプラント箇所に限らず、歯の健康をしっかりキープしていきましょう。

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