インプラント治療が可能な年齢は?高齢者のリスクと注意点

2025.04.11

 

インプラントは失われた歯の機能を補い、自分の歯のように自然な噛み心地を取り戻せる治療方法です。しかし、インプラント治療を受けるには年齢や健康状態が大きく関係し、高齢になるほど手術のリスクが高まります。

 

「自分にインプラント治療は可能だろうか?」と疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、インプラント治療を受けられる年齢の目安、治療が適用できないケース、高齢者が手術を受ける際のリスクや注意点について詳しく解説します。

 

この記事を読むことで、インプラント治療について理解が深まり、疑問や不安を解消できるはずです。インプラントを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

インプラント治療が可能な年齢は?

インプラント治療に明確な年齢制限はありませんが、おおよその目安が存在します。ここでは、インプラント治療を受けられる下限年齢(若年層)と上限年齢(高齢者)の目安について説明します。

インプラント治療が可能な年齢の下限(若年層)

若年層は顎の骨の成長が完了していることが条件で、年齢の目安は20歳前後です。

 

骨の成長途中でインプラントを埋め込むと、不安定になったり、顎の正常な成長を妨げたりするおそれがあります。

 

一般的に、顎の骨の成長が終わるのは20歳前後とされていますが、成長スピードには個人差があるため、治療の可否は歯科医の診断によって判断されます。

 

なお、18歳未満の未成年者は原則としてインプラント治療を受けられません。成長期が終わるまではほかの治療法を選択し、成人後にインプラントを検討するケースが一般的です。

 

ただし、事故や疾患による歯の喪失など特殊な状況においては、歯科医と相談のうえ、インプラントを検討することもあります。

インプラント治療が可能な年齢の上限(高齢者)

インプラント治療を受けられる年齢の上限は80歳前後が目安です。

 

高齢者の場合、顎の骨と全身の健康状態が良好で、安全に手術を受けられることが条件となります。これは、外科手術をともなうインプラント治療では、高齢になるほど手術の負担が増大し、さまざまなリスクが高まるためです。

 

ただし、高齢者の健康状態も個人差が大きいため、歯科医による詳細な検査を受け、慎重に判断することが大切です。診断結果に問題がなければ、90歳以上でも治療が可能なケースもあります。

 

高齢者はインプラントを装着することで、噛む力を取り戻せるだけではなく、食事を楽しむ喜びや健康の維持にも寄与すると期待されています。

インプラント治療の可否は年齢よりも健康状態が重要!

インプラント治療を受けるにあたって、年齢はあくまで目安の一つに過ぎません。実際に治療を受けられるかどうかは、年齢以上に顎の骨の状態や全身の健康状態が大きく影響します。

 

顎の骨の状態は、インプラントを支えるために必要な骨量・骨密度が十分であることが不可欠です。また、全身の健康状態に関しては、外科手術に耐えられるかどうかが大きなポイントとなります。

 

高齢になると、体力や免疫力の低下により、手術の成功率や回復のスピードに影響が出やすくなります。それでも、健康状態が良好で手術に耐えられる体力があれば、高齢者でも治療を受けることが可能です。

 

いずれにしても、歯科医による詳細な検査と診断を受け、健康状態に応じた最適な治療を検討することが大切です。

年齢にかかわらずインプラント治療を受けられないケース

 

インプラント治療の対象外となるのは、顎の骨が成長過程の未成年者や、健康状態が悪い高齢者です。

 

ただし、以下のようなケースでは、年齢に関係なくインプラント治療を受けられない、または治療が難しくなる可能性があります。

歯周病などで口内状態が悪い

歯周病になると、歯茎から細菌が侵入し、感染が広がる危険性があります。顎の骨まで感染が進行した状態でインプラントを埋め込むと、土台が不安定になり、インプラントがしっかりと定着せずに脱落しやすくなります。

 

そのため、歯周病がある場合は、まず適切な治療を受けて口内環境を整えることが最優先です。

 

また、口内の衛生状態が悪いと歯周病のリスクが高まるため、インプラント治療の前後を問わず、常に口内を清潔に保つことが重要です。

顎の骨の状態が悪い

インプラント治療では、インプラント体と呼ばれる歯の土台を顎の骨に埋め込むために十分な骨量と骨密度が必要です。

 

顎の骨量が不足している場合や骨密度が低い場合は、インプラントを安定して支えられず、治療が困難なことがあります。ただし、「骨造成」という処置で骨を増やすことができれば、インプラント治療は可能です。

全身疾患がある

インプラント治療は外科手術をともなうため、全身疾患などで健康状態が悪化している場合は、手術のリスクが高まり、治療が難しくなります。

 

インプラント治療の対象外となるおもな疾患は、糖尿病、循環器系の疾患、血液系の疾患、骨粗しょう症などです。

 

重度の糖尿病では、免疫力の低下が原因で手術後の回復が遅れるだけではなく、歯周病を引き起こすリスクも高まります。

 

そのほかの疾患に関しては、治療に使用される薬剤が骨の代謝や血液状態に影響を与えるケースがあるため、インプラント治療が制限されます。

治療後に通院できない

インプラント治療では手術後も、定期的な通院によるメンテナンスが欠かせません。歯科医院によって異なりますが、一般的には3〜6ヵ月に1回の通院が必要です。

 

そのため、病気、障害、高齢などの理由で定期的な通院が難しいと、治療を断念せざるを得ない場合があります。

 

また、通院だけではなく、歯磨きなど日常のメンテナンスを自分で行なえることも重要です。日常のメンテナンスがきちんとできなければ、手術が成功してもインプラントを長持ちさせることが難しくなります。

喫煙者

タバコに含まれるニコチンなどの有害物質は歯茎の血流を悪化させ、インプラントの定着を妨げる原因となります。

 

また、喫煙者は歯周病のリスクが高く、ヘビースモーカーになるとインプラント治療の成功率が低下します。

 

喫煙者でもインプラント治療は可能ですが、少なくとも治療中の一定期間は禁煙が必要です(治療後も禁煙することが望ましい)。

 

なお、電子タバコや加熱式タバコもインプラントに悪影響を与えるため、インプラントを検討している方は、この機会に禁煙をおすすめします。

妊娠中

妊娠中はさまざまな制限やリスクがあり、歯科治療が難しくなります。

 

例えば、妊娠中は胎児への影響を考慮し、薬剤の使用が厳しく制限されるため、インプラント治療や術後のケアに必要な麻酔や抗菌薬などの処方ができません。また、妊娠初期はつわりの影響で吐き気を催しやすいことも、歯科治療が困難な理由の一つです。

 

さらに、レントゲン撮影や手術中の出血による胎児への影響も懸念されます。

 

母体への負担や胎児への影響を考えると、インプラント治療は出産後に体調が安定してから検討することが一般的です。

高齢者のインプラント治療のリスクと注意点

 

前述したように、高齢者でも顎の骨の状態や全身の健康状態が良好であれば、インプラント治療を受けることは可能です。しかし、年齢を重ねるにつれて免疫力や治癒力が低下するため、手術への影響は避けられません。高齢者がインプラント治療を受ける際には、以下のようなリスクや注意点を把握しておきましょう。

外科手術による負担が大きい

インプラント治療は外科手術が必要になり、高齢者にとって身体的な負担が大きくなる傾向があります。さらに、高齢者は手術によるストレスを受けやすく、体調を崩すリスクが高まることも懸念されます。

 

こうした負担を軽減するためには、患者一人ひとりの状態に応じた慎重な治療計画が必要です。

 

また、高齢者は麻酔や手術後の回復力が若い世代と比べて低下しているため、術後の適切な管理も欠かせません。

 

具体的には、徹底した感染対策、食事への配慮(やわらかい食事の提供)、日常生活のサポートなどが挙げられます。

細菌に感染しやすい

高齢者は免疫力が低下しており、手術後に細菌感染のリスクが高まります。インプラント装着直後は傷口が細菌にさらされやすいため、注意が欠かせません。

 

また、加齢にともない唾液の分泌量が減少すると、口内の自浄作用が弱まり、細菌が繁殖しやすい状態になることが懸念されます。

 

感染症を防ぐには、治療前から口内環境を整え、健康的な状態を維持することが重要です。さらに、術中および術後の衛生管理を徹底することで、感染リスクを最小限に抑えられます。

 

インプラント治療は、高齢になるほど細菌感染のリスクが高まることを理解し、適切なケアを心がけましょう。

顎の骨とインプラントが結合しにくい

インプラント治療では、歯茎を切開して人工的な歯根となるインプラント体を埋め込み、顎の骨と結合させる工程が必要です。

 

しかし、高齢者は手術後の傷の回復に時間がかかる傾向があり、顎の骨とインプラントが十分に結合しない可能性があります。

 

特に、持病や既往症を抱えている場合、免疫力や治癒力が落ちており、インプラントと骨が結合しにくくなります。うまく結合しないと、インプラントが安定しないため、再手術を受けなければなりません。

 

体力の低下や回復力の衰えが見られる場合は、インプラント治療の適応について慎重に判断する必要があります。

治療費が高額になる可能性あり

インプラント治療は、ほかの治療方法(ブリッジ、入れ歯など)と比較して費用が高額です。しかも、基本的に保険が適用されないため、経済的な負担が大きくなります。

 

特に高齢者の場合、細菌感染やインプラントと骨の結合不全などが原因で治療期間が予定より長引くことがあり、もともと高額な治療費がさらに膨らむ可能性も出てきます。

 

そのため、治療を開始する前に、治療費全体の見積もりや追加費用が発生するリスクについて、しっかりと確認しておくことが大切です。費用面の不安を解消したうえで、インプラント治療を始めましょう。

インプラント治療は早めの対応がおすすめ

インプラント治療を検討中なら、早めの対応をおすすめします。インプラント治療によって、残っている歯を良好な状態に保てるからです。

 

一方、部分入れ歯やブリッジは周囲の歯に負担をかけやすく、結果として歯のダメージが蓄積されるリスクがあります。

 

また、高齢者の場合は年齢を重ねるにつれて、以下のような懸念が生じます。

  • 健康上のリスクが増し、インプラント治療を受けられなくなる
  • 治療期間の長期化にともない、治療費が増加する

早めに対応することで、こうしたリスクを軽減し、治療期間や費用の負担も抑えられます。

まとめ

インプラント治療が可能な年齢は、下限として20歳前後、上限として80歳前後が目安です。

 

ただし、年齢よりも若年層は顎の成長が終了していること、それ以外の年齢層は顎と全身の健康状態が良好であることが重要です。

 

歯周病や顎の骨の状態が悪い場合、全身疾患を抱えている場合、喫煙者や妊婦は年齢に関係なくインプラント治療を受けるのが難しくなります。

 

高齢者の場合、手術にともなうリスクや術後の管理が課題となりますが、歯科医の診断結果に問題がなければ治療を受けることが可能です。

 

インプラント治療を成功させるには、早期の対応と患者の状態に合った治療計画を立てることが大切です。信頼できる歯科医院に早めに相談しましょう。

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