老後のインプラント治療は大変?メリット・デメリット、注意点を全解説
2025.04.01
年齢を重ねていくほど、「すべて自分の歯」という人のほうが少なくなっていきます。抜歯せざるを得ない状況になったとき、以前は「入れ歯かブリッジか」という選択肢しかありませんでしたが、インプラントという画期的な治療法が採り入れられるようになり、「インプラントにしてみたい」と検討を始めている人も多いでしょう。
しかし、インプラントにしている高齢者はまだ少なく、「歳を取った時に本当にインプラントは大丈夫なのだろうか」という声もあります。
こちらの記事では、高齢者がインプラント治療を受ける際のデメリットや老後の注意点などを詳しく解説していきます。
老後のインプラント治療はデメリットだらけ?その理由とは
「インプラントにすると老後が大変」と言われる理由は確かにいくつかあります。
若い時にインプラント手術を受けてから10年後、20年後、インプラントの一般的な耐用年数を超えてくれば、インプラントに不具合が出てくる可能性もあります。
最初の手術のときとは年齢も体質も収入も変わっているのに、再び同じ手術が受けられるのだろうか?という不安の声も聞こえます。
その不安の理由をひとつひとつ、説明していきましょう。
定期的なメンテナンスを受ける必要があるから
インプラントは、「人工歯だからもう虫歯になることは無い」というわけではありません。骨と歯茎の中に部品が埋まっていますので、そこから細菌が侵入すれば「インプラント周囲炎」という歯周病になってしまいます。
インプラント周囲炎は初期症状のときにあまり自覚症状が無く、検診に通うのをしばらくやめていたら周囲炎がかなり進行してしまっていた、というケースもあります。
それを防ぐために、自分の歯と同じように毎日丁寧なブラッシングが必須です。加えて、数ヶ月に一度、歯科医院に足を運んで状態をチェックしてもらう定期メンテナンスも必要不可欠です。もしかしたら何か大きな病気をして、自分の足で通えなくなってしまうかもしれないという不安を抱く人もいるでしょう。
老後に歯科医院に足を運べる状況ではなくなってしまったり、認知症が進んで丁寧な歯磨きができなくなってしまうことが不安という方は、将来的に総入れ歯などを見据えておいて、インプラントにはしないほうが賢明かもしれません。
健康状況の悪化が、治療部位に悪影響を及ぼすおそれがあるから
年齢を重ねれば、どうしても体の不調が出やすくなります。特に女性は骨粗しょう症を抱えている人が多く、60代の女性では5人に1人、70代の女性では3人に1人が骨粗しょう症を抱えていると言われています。
インプラントは顎の骨に穴を開け、人工歯根を埋める治療法です。その部品をしっかり固定できるほどの骨量、骨密度が無ければ治療を受けることができません。
また、糖尿病の方は感染症にかかりやすいため、インプラント周囲炎にかかるリスクが上がったり、心臓病などの全身疾患を持っている方は手術を受けられるだけの安全性が確保できない場合があります。
骨の衰えによって、インプラントが不安定になることがあるから
先ほどお伝えした骨粗しょう症など、加齢によって骨量や骨密度は低下します。インプラントの手術時には問題の無い状態の骨だったとしても、加齢が進んで骨の状態が衰えてくると、埋めてあった人工歯根がグラついたり脱落する可能性があります。
再治療時の肉体的・経済的な負担が大きくなりがちだから
入れ歯やブリッジに比べて寿命が長いこともインプラントの大きな魅力のひとつではありますが、耐用年数に限界が来て再手術が必要になる場合もあります。その際に、全身麻酔や出血などを伴うため、体力的に手術に耐えることができないと判断されることもあります。
また、インプラントは保険適用外の治療になりますので、1本あたり30~50万円が相場となります。最初の手術時は収入があって支払い能力があったとしても、耐用年数が過ぎて再手術が必要になった際には収入は年金のみ、という可能性も考えられます。
耐用年数が長いインプラントですが、体質やお手入れ方法によって限界が訪れることもあります。再手術が必要になったとき、体力的・経済的に難しい状況になっているかもしれないことも視野に入れておきましょう。
ただし、日々の歯磨きをしっかり行い、忘れずに定期メンテナンスに通っていただくことで、再手術無しに使い続けていただけることも大いにあります。
利点もたくさん!老後におけるインプラント治療のメリット
主に「再手術の際に困難な状況にあるかもしれない」という点でのデメリットをお伝えしました。しかし、「老後のことを考えたらインプラントはやめたほうがいい」というわけでは決してありません。
年齢を重ねているからこそ、「インプラントで良かった」と思える点もたくさんあります。
自然歯と変わらない感覚で、食事を楽しむことができる
入れ歯使用者が多くなってくる高齢期は、「固いものが食べにくい」と食事の場面でお悩みを持っている人がたくさんいらっしゃいます。
天然歯の咀嚼力を100%としたときに、入れ歯の咀嚼力は20~40%程度、インプラントは80~90%と、格段に高くなります。
日々の食事で健康に気を使う人が増える高齢期だからこそ、様々な食材をしっかり噛んで食べられることは生活の楽しみと健康に直結していきます。
審美性が高く、若々しい見た目を維持できる
インプラントの大きなメリットのひとつが、審美性の高さです。入れ歯やブリッジなど、一見して義歯だと分かる人工歯が増えてくる人が多い年齢で、自分の歯と見分けがつかないほどの美しい歯であることは若々しい見た目になります。
特に入れ歯は口を開けた時にフックの金属が光って見えるので、どうしても目立ちます。「入れ歯=高齢者」という認識が一般的である中、「全部自分の歯」に見えるだけでずいぶんと顔の印象が変わってきます。
また、食事の際にしっかりと噛めることで顎の筋肉が衰えにくく、フェイスラインがたるみにくくなる効果も期待できます。
毎日のお手入れがしやすい
自分の歯を失った際に、義歯を入れる方法として最も低コストなのは入れ歯です。しかし、食後の歯磨きとは別に、毎回取り外して洗浄・殺菌などを行う必要があります。更に、加齢とともに歯茎の形も変わっていくので、サイズが合わなくなったり、噛み合わせが悪くなったり、匂いが取れなくなったりしていきます。その際は再び入れ歯の作り直しとなります。
インプラントは自分の歯と同じように歯茎の中までしっかり埋まっていますので、お手入れは他の歯と同じ、丁寧なブラッシングのみです。入れ歯用の洗浄剤や専用ブラシなどを使う必要がないため、あまり手間がかかりません。
誤嚥性肺炎や認知症の予防になる
なんと日本人の死因の第3位は、「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液が食道に入らずに、気管支に入ってしまうことで肺炎になる症状のことです。
入院中の高齢者の死亡理由でよく耳にする「肺炎」というのは、ほとんどがこの誤嚥性肺炎です。飲み込む力が衰えるせいで、食べ物や唾液が食道ではなく気管支に入り、肺に到達し、肺炎になります。
飲み込む筋肉は噛む筋肉と密接に繋がっていますので、「しっかり噛んで食べる」ことは誤嚥性肺炎になるリスクを減らすこともできます。
また、噛むことは脳に刺激が伝わって認知症の予防にもなります。「食事を美味しく食べられる」以外にも、しっかり噛めることはこのような健康維持にも密接に繋がっています。
老後のインプラント治療の注意点
「高齢期」と呼ばれる年齢でインプラント治療を受ける際のメリット・デメリット、両方をお伝えしました。気軽に治療できる入れ歯と違って手術を伴うインプラントには、どうしてもリスクが伴います。それらをよく理解した上で治療を決めていただくことをおすすめします。
では、実際に高齢期にインプラント治療に進む際に、どんなことを確認し、気を付けたらいいのでしょうか。
持病がある場合には、必ず担当の歯科医師に相談する
さきほどデメリットの項目でお伝えしたように、心臓病や糖尿病、高血圧などの持病がある際は、事前に歯科医師に必ず伝えましょう。
服用している薬などがあれば、お薬手帳を持参して持病と症状を伝えるのが確実です。
インプラント手術は外科手術になりますので、出血や全身麻酔に耐えられないと判断された場合はインプラント手術・治療を受けられないこともあります。糖尿病は出血が止まりにくいことや、感染症にかかりやすいため、手術後にインプラント周囲炎にかかるリスクも上がります。
それらも踏まえて、担当歯科医師の判断に委ねることになります。
「持病がある人はインプラント手術を受けられない」というわけではありませんが、必ず治療前に歯科医師に申告するようにしてください。
治療後の定期メンテナンスを無理なく受けられるか確認する
インプラントを入れたあとは、数ヶ月に一度、状態を確認するためにメンテナンスに通う必要があります。手術を受けた歯科医院以外でもメンテナンスを受け付けてくれることもありますが、やはり手術を受けた歯科医院でその後のメンテナンスを続けていったほうが望ましいでしょう。
インプラントにグラつきや不具合がないか、インプラント周囲炎になっていないかなど、その後の歯の状態を左右する、とても大切なメンテナンスです。
インプラントが埋まっている限り続けていく必要がありますので、診療時間や立地、交通手段など、長い目で見て通い続けられそうかどうか、しっかり確認しましょう。
歯科医院によっては訪問診療や送迎サービスを行っているところもあります。長いお付き合いを見据えて、歯科医院を選ぶ条件にするのもひとつです。
経験豊富な歯科医師が在籍していて、設備が充実している歯科医院を選ぶ
インプラント手術・治療は歯科医師なら誰でも行うことができます。つまり、医師によって経験や知識の差がかなりあるということになります。
いち早くインプラントに関する知識を学び、多くの患者様を治療してきた歯科医師ならば、加齢に伴うインプラントの変化に関しても知識と経験を持っています。
また、若い患者様に比べて高齢の方のインプラント手術は様々な事態に備えておく必要があります。万が一の状況になった際に適切な処置ができるよう、最新の手術設備や検査機器を備えている歯科医院を選ぶことも大切です。
充実した設備を揃えていれば歯科医院のホームページやパンフレットに必ず記載がありますし、治療前のカウンセリングの際などにも申し出れば見学させてもらえますので、理解・納得できるまで何度でも質問するようにしてください。
保証期間の長さや内容をよく確認する
インプラント治療を行っている多くの歯科医院では、保証期間を設けています。一般的には10年程度ですが、インプラントは10年以降こそ不具合が出てくる時期です。
最初のインプラント手術から経年劣化が進み、再手術が必要になったときに費用を最小限に抑えるためにも、保証期間や保証内容を治療前にしっかり確認しておきましょう。
本町通りデンタルクリニックでは、インプラント手術・治療を受けていただき、その後の定期メンテナンスにも通い続けてくださっている患者様には永久保証をお約束しています。「何かあった時にも大きな追加治療費がない」と安心して通っていただける制度を整えております。
まとめ
老後のインプラント手術・治療に関するメリット・デメリット、再手術が必要になった際に留意する点をお伝えしてきました。
若い患者様に比べればいくつかのリスクもありますし、インプラントとは一生のお付き合いと言えますので、「本当に一生、メンテナンスに通い続けられるの?」などの不安が生まれるのは当然です。
しかし、高齢になっても全く問題なく一度のインプラント手術で「一生モノ」にされている患者様が大勢いらっしゃるのも事実です。「入れ歯が合わなくなってきた」「友達と食事するときに気になる」といったお悩みが増える時期に、なんのトラブルもなく自分の歯と同じようにしっかりものが噛める快適さは何ものにも代えがたい充足感があります。
「年齢的に、今からインプラントにしても大丈夫なの?」「老後もインプラントに問題は無いの?」といったご質問やご相談にいつでもお答えいたしますので、本町通りデンタルクリニックまでお気軽にお声がけください。