インプラントの素材の種類とは?パーツ別に各素材のメリット・デメリットを紹介します

2025.04.01

 

インプラント治療をしたいと考えたとき、素材選びに悩む方も多いでしょう。インプラントは3つのパーツに分かれており、セラミックやゴールド、チタン、ジルコニアなど、使われる素材はさまざまです。

 

それぞれの素材には異なるメリットやデメリットがあるため、あらかじめ把握しておけば素材選びの際に役立つでしょう。

 

本記事では、インプラントの構造をおさらいしたうえで、インプラント治療で使われる素材のメリットとデメリットを、パーツごとに紹介します。

インプラントの構造をおさらい

インプラントは上部構造と支台部、歯根部の3つのパーツで構成されており、それぞれ使われる素材が異なります。まずはインプラントの3つのパーツについて、概要をおさらいしておきましょう。

 

上部構造(人工歯)

上部構造は被せ物の部分で、失った歯の代わりとなります。使われる素材は見た目が重要視され、ほとんどが天然歯に近い色や質感です。また、食べ物を咀嚼する機能を補うパーツでもあるため、それなりの負荷に耐えられる強度の素材が使われます。

支台部(アバットメント)

支台部にあたるアバットメントは、人工歯である上部構造と次の見出しで解説する歯根部にあたるインプラント体を接続するためのパーツです。

 

アバットメントは装着する仕組みの違いにより、スクリュータイプとセメントタイプに分けられます。前者はインプラント体の上にネジでアバットメントを固定し、その上に人工歯を被せる仕組みです。

 

後者はアバットメントと人工歯が一体となったものを、インプラント体に装着する仕組みとなります。アバットメントは、人工歯の角度の調整や噛み合わせの調整などの役割を担っています。

歯根部(インプラント体)

歯根部にあたるインプラント体は、歯根の代わりとなる部分です。直径や長さはさまざまで、使用者の骨の幅や高さ、埋入位置などに合わせて選びます。

 

また、インプラント体の形状にはスクリュータイプとシリンダータイプがあり、こちらも使用者の骨の状態などに合わせて選びます。ただし、骨との結合のしやすさから、一般的にはスクリュータイプが主流です。

 

インプラント体は歯茎を切り開き、顎の骨に穴を開けてねじ込みます。インプラント体が数ヵ月かけて顎の骨と結合することで、インプラント全体をしっかりと固定できるようになります。

上部構造(人工歯)の素材

 

審美性が重要となる人工歯の素材は、選択肢が豊富です。

セラミック

セラミックとは陶器のことであり、天然歯のようなツヤや透明感のある白色の素材となります。セラミックと呼ぶものは一般的に、内側も外側もすべてセラミックで作られているため、オールセラミックと呼ぶ場合もあります。

 

セラミックの白色は多様であり、自分の歯の色に近いものを選べば自然な見た目となるでしょう。汚れや変色の心配もほとんどありません。

 

また、金属を含まないため、金属アレルギーの方でも安心して使用できます。ただし、衝撃に弱いため、折れたり欠けたりする可能性があるでしょう。費用は1本8〜18万円程度が相場です。

 

【メリット】

  • 天然歯に近い仕上がりとなり審美性が高い
  • 汚れや変色の心配がほとんどない
  • 金属アレルギーの方も使用可能

 

【デメリット】

  • 衝撃に弱いため、奥歯への使用や歯ぎしりのある方への使用には不向き
  • 費用や修理費が比較的高額

ジルコニア

ジルコニアはセラミックの一種です。一般的にジルコニアは、すべてジルコニアで作られているものを指すため、オールジルコニアと呼ばれる場合もあります。

 

ジルコニアの特徴は、人工ダイヤモンドと呼ばれるほどの耐久性です。また、セラミックほどの透明感はありませんが、陶器のような白色をしています。ただし、ジルコニアの色選びに失敗すると、見た目に違和感が生じてしまう点には注意が必要です。

 

さらに、ジルコニアは表面が滑らかで歯垢が付き難く、歯周病のリスクが少ないという特徴もあります。費用は10〜20万円程度が相場です。

 

【メリット】

  • 耐久性に優れ、衝撃の強い奥歯への使用に適している
  • 変色や劣化が少なく、美しい見た目を維持しやすい
  • 金属アレルギーの方も使用可能

 

【デメリット】

  • 天然歯より強度があり、噛み合わせる天然歯がすり減るおそれがある
  • 顎への負担が大きい
  • 真っ白なため適切なものを選ばないと見た目の違和感が出やすい
  • セラミックよりもさらに費用が高額になる

ジルコニアセラミック

内側にジルコニアを使用し、外側をセラミックで覆った二重構造の素材を、ジルコニアセラミックと呼びます。

 

表面がセラミックのため、天然歯のようなツヤや透明感のある見た目に仕上がるのが特徴です。しかも、内側のジルコニアのおかげで、衝撃に強いという特徴もあります。

 

審美性が求められる前歯だけでなく、強い衝撃のかかる奥歯にも使用できる素材です。まさに、ジルコニアとセラミックのいいとこ取りができる素材といえるでしょう。

 

セラミックやジルコニアと同じく、金属アレルギーの方も使用できます。費用は9〜20万円程度が相場です。

 

【メリット】

  • 審美性が高く天然歯に近い自然な仕上がりとなる
  • 強度と耐久性に優れ、破損しにくい
  • 噛み合わせで天然歯がすり減る可能性が少ない

 

【デメリット】

  • ジルコニアとセラミックを組み合わせるため、費用が高額になりやすい

ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックは、セラミックとレジンを混ぜ合わせて作られた素材です。レジンは保険適用の治療でも用いられる歯科用プラスチックで、安価です。

 

ハイブリッドセラミックも保険適用となる場合があり、費用を抑えたインプラント治療が可能となります。相場は4〜12万円程度です。

 

また、セラミックやジルコニアよりは劣りますが、レジンのみの場合より自然な見た目に仕上がります。色のバリエーションもあり、自分の歯に合った色選びも可能です。

 

ただし、ハイブリッドセラミックは表面に傷が付きやすいため、汚れが付着して虫歯や歯周病になる可能性が高くなります。インプラント治療後は、デンタルフロスや歯間ブラシなどを使用した、念入りなケアが必要となるでしょう。

 

【メリット】

  • 費用が抑えられる
  • 比較的自然な仕上がりになる
  • 金属アレルギーの方も使用可能

 

【デメリット】

  • 経年劣化で黄ばみやすい
  • セラミックやジルコニアより強度や耐久性が低く、すり減ったり折れたりするリスクがある
  • 汚れが付着しやすく、虫歯や歯周病のリスクがある

メタルボンド

メタルボンドは内側に金属、外側にセラミックを使用した二重構造の人工歯です。表面がセラミックでできているおかげで、ほとんど変色しません。また、セラミックの部分は、割れても修理しやすいでしょう。

 

メタルボンドは内側が金属のため強度があり、奥歯への使用に適しています。ただし、金属アレルギーの方の使用には注意が必要です。

 

さらに、金属が黒ずんで歯茎が黒く見えるおそれもあります。全体の見た目も、セラミックほど自然ではありません。費用の相場は、5〜15万円程度です。

 

【メリット】

  • 変色しにくい
  • 汚れが付きにくい
  • 強度があるため、奥歯への使用に適している

 

【デメリット】

  • 内側が金属のため、セラミックほど自然な見た目にはならない
  • 金属アレルギーの方の使用は難しい

ゴールド(金合金)

金を主成分として、ほかの金属と混ぜ合わせたものを使用した人工歯で、ゴールドクラウンと呼ばれます。天然歯と同じような硬さで、適度なすり減りもあり、自分の歯と馴染みやすいのが特徴です。

 

さらに、ゴールドクラウンには適度な柔軟性があり、咀嚼の力が分散されます。そのため、長期の使用でも割れや欠けのリスクが少なくなります。虫歯や金属の腐食の心配もありません。

 

また、ゴールドクラウンは口内で溶けにくいため、金属アレルギーの方でも使用できます。ただし、金属そのものが見えるため、前歯など目に触れる部分の治療には向いていません。費用の相場は4〜15万円程度です。

 

【メリット】

  • 天然歯と同じような硬さで、噛み合わせのトラブルが起きにくい
  • 虫歯になりにくい
  • 金属でも腐食しない
  • 金属アレルギーの方でも使用できる可能性が高い

 

【デメリット】

  • 金属のため、前歯などの治療には不向き
  • 費用が高額になる

支台部(アバットメント)の素材

アバットメントには、チタンが使用されるケースが多くあります。また、場合によってはジルコニアやゴールドが選ばれることもあります。

チタン

チタンは金属の一種で、ほかの金属と比べて軽いのが特徴です。その軽さは、銅の半分、鉄の60%ほどで、アバットメントとして埋め込まれてもほとんど違和感はありません。

 

また、チタンは強度に優れており、鉄の2倍ともいわれています。そのため、噛み合わせによる折れや割れ、変形などのリスクが少なくなります。

 

さらに、チタンは錆びにくい金属の代表ともいわれ、アルミニウムより耐食性がある点も特徴です。塩水や酸にも耐えられるため、アバットメントの素材として幅広く活用されています。

 

なお、チタンは金属ですが生体親和性が高く、アレルギーを起こす可能性が少ないため、金属アレルギーの方でも使用できます。チタン製アバットメントの費用は、3.5〜5.5万円程度が相場です。

 

【メリット】

  • 軽くて違和感が少ない
  • 強度に優れており、破損のリスクが少ない
  • 錆びにくい
  • 生体親和性が高く、アレルギーが起きにくい

 

【デメリット】

  • 歯茎が下がると銀色が目立ち、審美性に欠ける

ジルコニア

ジルコニアは人工歯だけでなく、アバットメントにも使用されます。一般的に、金属製のアバットメントは、目に触れる部分に使うと金属が透けて見え、天然の歯茎との違いが明らかです。

 

しかし、ジルコニア製のアバットメントは白色であり、歯茎から透けても違和感がほとんどありません。将来的に歯茎が下がってきた場合でも、目立つことはないでしょう。

 

表面が滑らかで細菌が付きにくく、口内を衛生的に保てるのもメリットです。なお、金属ではないため、金属アレルギーの方でも使用できます。ジルコニア製のアバットメントの費用は、5.5〜11万円程度が相場です。

 

【メリット】

  • 天然歯に近い白色で、歯茎が下がっても目立ちにくい
  • 金属アレルギーのリスクが少ない

 

【デメリット】

  • 硬い素材のため、噛み合わせる天然歯に負担がかかる

ゴールド(金合金)

金を含んだ金合金をアバットメントに使用することもあります。硬すぎずやわらかすぎず、インプラント体と適合しやすいのが特徴です。生体適合性にも優れており、長期間の使用でも違和感は少ないでしょう。

 

また、耐久性があり、摩擦による折れやすり減りの心配もほとんどありません。ゴールドのアバットメントはインプラント治療における実績が豊富で、信頼性が高いことから選ばれるケースが多くあります。

 

ただし、歯茎が下がってくると金色が目立ち、審美性に欠ける点はデメリットです。費用の相場は5.5〜16万円程度となっています。

 

【メリット】

  • 硬すぎずやわらかすぎないため、インプラント体と適合しやすい
  • 耐久性があり、すり減りや折れのリスクが少ない

 

【デメリット】

  • 歯茎が下がってくると金色が目立ち、見た目が良くない
  • 費用が高額になる

歯根部(インプラント体)の素材

歯根部(インプラント体)はアバットメントと同様に、多くの場合がチタンまたはジルコニアを使用します。

チタン

チタンには骨と強く結合する性質があるため、顎の骨に穴を開けて埋め込むインプラント体に最適です。顎の骨にチタン製のインプラント体を埋め込むと、チタンの表面に新しい骨の組織が入り込み、顎の骨とインプラント体がしっかりと接続します。

 

そのおかげで、天然歯と遜色ないほどの噛む力を実現できます。軽量で耐久性があり、さらに錆びにくい点もメリットです。

 

なお、インプラント体に使用されるチタンには、チタンが99.8%以上含まれる「純チタン」と、アルミニウムなどほかの金属を混ぜ合わせた「チタン合金」があります。

 

純チタンは生体親和性が高く、アレルギーリスクの少ない点が特徴です。顎の骨と結合しやすく、経年劣化が少ないというメリットもあります。

 

一方のチタン合金は、純チタンよりも強度に優れているのが特徴です。ただし、生体親和性が低く、アレルギーを起こしやすい点はデメリットでしょう。

 

【メリット】

  • 顎の骨とインプラント体が強く結合する
  • 軽量で違和感が少ない
  • 強度があり、破損のリスクが少ない
  • 錆びにくい
  • 金属アレルギーが起こりにくい

 

【デメリット】

  • チタン合金の場合、金属アレルギーのリスクが上がる
  • チタン合金の場合、経年劣化しやすい

ジルコニア

セラミックのなかで特に硬い素材であるジルコニアも、インプラント体に使われます。ジルコニア製のインプラント体は天然歯に近い白色で、歯茎が下がってきてもほとんど目立ちません。

 

熱や薬品などによる変色が少なく、汚れも付きにくいため、長期間使用しても美しい状態を保てます。金属アレルギーの心配もありません。

 

ただし、チタン製のインプラント体よりも、費用は高い傾向にあります。また、ジルコニア製のインプラント体に対応している歯科医院が少ないのもデメリットです。

 

【メリット】

  • 天然歯に近い白色で、歯茎が下がってきても違和感が少ない
  • 耐久性に優れている
  • 熱や薬品に強く、変色しにくい
  • 金属アレルギーが起こりにくい

 

【デメリット】

  • チタン製のインプラント体よりも費用がかかる
  • 対応している歯科医院が少ない

インプラントの素材を選ぶ際のポイント

 

インプラントは、パーツごとにさまざまな素材の選択肢があります。それぞれの特徴や値段を踏まえ、担当医師と相談しながら自分に合ったものを選ぶ必要があります。その際は、以下の点を意識するとよいでしょう。

  • 審美性、価格、耐久性など重視する要素
  • 自分の体質との適合性
  • 治療費の総額
  • 治療費と満足度のバランス

基本的に、審美性や機能性に優れた素材ほど費用は高額になるため、治療費を抑えることを重視する場合は注意が必要です。見た目や耐久性が劣るゆえに後悔することがないよう、治療費と満足度のバランスをよく考えましょう。

 

なお、治療費の設定は歯科医院ごとに異なります。各パーツの値段は安くても、治療費の総額が高くなるパターンもあるため、見積もりの確認を怠らないようにしましょう。

 

また、アレルギーや特定の疾患などの有無、噛み合わせの癖など、体質に合わせた素材を選ぶことも重要です。

まとめ

インプラントは上部構造と支台部、歯根部の3つのパーツで構成されており、それぞれ使われる素材が異なります。

 

上部構造にあたる人工歯は審美性が重要視され、セラミックやジルコニア、ハイブリッドセラミックなど素材の種類が豊富です。

 

一方、支台部にあたるアバットメントは、軽量で強度の高いチタンを使うことが多く、場合によってジルコニアやゴールドなども選択されます。

 

また、歯根部であるインプラント体には、チタンまたはジルコニアが使われます。インプラントの素材を選ぶ際は、審美性や機能性、価格などからどれを重要視するのか考慮するとよいでしょう。

 

体質との適合性や治療費の総額、治療費と満足度のバランスなどを踏まえ、歯科医師と相談しながら自分に合った素材を選びましょう。

PAGE TOP PAGE TOP