インプラントの寿命がきたら?平均寿命や不具合の原因と予防策、対処法を解説

2023.11.30

 

インプラント治療は失った歯を人工歯で補う治療法の一つで、入れ歯やブリッジよりも寿命が長いのが特徴です。しかし、口内環境やお手入れの状況によっては、想定より寿命が短くなるおそれもあります。したがって、寿命が縮む原因やよくある不具合の例を押さえたうえで、有効な対策を講じることが大切です。

 

そこで本記事では、インプラントの平均寿命や寿命を縮める要因のほか、インプラントに起こりがちな不具合、寿命を延ばすコツ、寿命がきた際の対処法などについて解説します。

インプラントの平均寿命は10~15年ほど

インプラントの平均的な寿命は、埋入してから10~15年程度です。ただし、口腔内の状態やお手入れの状況などにより、インプラントの寿命は大きく変わってきます。

 

厚生労働省が公表した「歯科インプラント治療のためのQ&A」によれば、インプラントの10~15年の累積残存率は上顎で約90%、下顎で約94%です。つまり、インプラント治療を受けた約9割の方が、10~15年間、インプラントを継続的に使用できているということになるため、実際の平均寿命はさらに長い可能性もあります。

 

参考:厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」 歯科インプラント治療のための Q&A

 

実際、20~30年間にわたってインプラントを使用している方も少なくありません。つまり、インプラントは「第二の永久歯」になり得るのです。

インプラントと入れ歯、ブリッジの寿命の違い

 

歯を失った場合、人工歯(代わりの歯)で補う治療を検討します。人工歯を用いた治療法には、おもに以下の3種類があります。

  • インプラント
  • 入れ歯(デンチャー)
  • ブリッジ

インプラントは入れ歯・ブリッジより平均寿命が長く、おおよそ2倍~3倍ほど長持ちする傾向にあります。平均寿命をそれぞれ表形式でまとめたので、こちらも併せてご確認ください。

 

 

またインプラントには、入れ歯・ブリッジにはない、以下のような強みがあります。

  • 天然歯とほぼ同等の機能性・審美性を発揮する
  • 治療箇所の違和感が少ない
  • ほかの健康な歯に影響を与えない
  • 顎骨に影響を与えない

一方で、インプラントには保険適用外で治療費用が高い、治療期間が長引きやすいといった難点もあります。しかし、使い心地や見た目の良さ、ほかの歯や顎骨への負担などを考慮すると、インプラントが最もおすすめの治療法といえるでしょう。

インプラントの寿命を縮めるおもな要因

 

インプラントの寿命を縮める要因としては、おもに以下の6つが挙げられます。

  • インプラントの品質が悪い
  • 虫歯や歯周病がある
  • メンテナンスが徹底されていない
  • インプラント周囲炎を起こしている
  • 歯ぎしりや食いしばりの癖がある
  • 喫煙の習慣がある

それぞれ詳しく解説します。

インプラントの品質が悪い

インプラントを製造・販売しているメーカーは多数存在するので、インプラント自体の品質もメーカー・製品によって異なります。品質の良いインプラントは、骨としっかり結合できるため、成功率や残存率が高く長持ちしやすいでしょう。

 

一方、有効な臨床データやエビデンスを持たないメーカー・製品が存在することも事実です。品質が悪いインプラントを使用すれば、当然ながら術後のトラブルも起こりやすくなるため、事前の確認が欠かせません。

 

インプラント治療を受ける場合、高品質なインプラントを取り扱っている歯科医院を選択することが大切です。

虫歯や歯周病がある

虫歯や歯周病などが進行していると、インプラント埋入後に骨の造成を阻害したり、腫れや膿といった症状につながったりすることがあります。したがって、あらかじめ検査・治療を行ない、口腔内の状態を整えておくことが大切です。

 

歯科医院を選ぶ際には、インプラント治療の内容はもちろん、虫歯や歯周病の検査・治療をしっかりと実施しているかどうかも確認しましょう。

メンテナンスが徹底されていない

インプラント治療はインプラント体や人工歯を装着したら終わりではなく、術後のメンテナンスが欠かせません。具体的には、歯科医院でプロのクリーニングを受けたり、歯間ブラシやデンタルフロスでのセルフケアを実践したりする必要があります。

 

長期にわたってメンテナンスを怠った場合、骨が溶けてインプラントの脱落を引き起こしてしまう可能性もあります。問題を早期発見して対処できるよう、歯科医院で定期的にチェックしてもらいましょう。

インプラント周囲炎を起こしている

インプラント周囲炎とは、細菌の感染からインプラントの周囲が炎症になる病気です。インプラント周辺に歯周病菌が繁殖した結果、歯周病になっている状態のことを指します。

 

インプラント周囲炎のおもな要因は、メンテナンス不足によるプラーク(歯垢)の蓄積です。インプラント周囲炎が疑われる場合には、速やかに治療を受けましょう。

歯ぎしりや食いしばりの癖がある

歯ぎしりや食いしばりの癖があると、インプラントに負担がかかるので、結果的に寿命も縮まってしまいます。

 

天然歯の場合、歯根と歯槽骨の間に歯根膜という薄い膜がありますが、これは噛んだ際の衝撃をやわらげるショック吸収材の役割を担うものです。しかし、インプラントには歯根膜がなく、衝撃が骨に直接伝わってしまいます。

 

インプラントに強い力が継続的にかかると、インプラントの破損や脱落を起こしやすくなります。したがって、マウスピースを使って歯ぎしりや食いしばりによる衝撃を軽減する、といった対策を講じる必要があります。

喫煙の習慣がある

煙草に含まれるニコチンは、血流を悪化させるだけでなく、組織への栄養供給を妨げます。特に、日頃から喫煙の習慣がある場合には、インプラントと骨の結合が阻害され、インプラントの定着率が下がるおそれがあります。

 

また、喫煙による口腔内環境の悪化は、インプラント周囲炎を引き起こす要因にもなります。そういった事情から、インプラント治療を受ける際には、禁煙を勧められるケースが多いでしょう。

そろそろ寿命?インプラントに起こりがちな不具合

それでは、「インプラントに不具合が出てきた」というのは、一体どのような状態を指すのでしょうか。

 

インプラントは、歯根にあたるインプラント体、その上の結合部であるアバットメント、一番上の人工歯(上部構造)で構成されます。

インプラント構造体

そして、インプラントに起きやすい不具合には、下記のようなものが挙げられます。

  • インプラント体が折れる・グラつく
  • アバットメント(連結部分)が折れる
  • 人工歯が破損する

インプラント体が折れる・グラつく

顎の骨と結合しているインプラント体が破損すると、かなり大きな処置が必要になるケースが多いです。具体的には、顎の骨も含めてインプラント体を撤去することになります。

 

当院では、できるだけ周囲の骨を削り取らずにインプラント体だけを取り出せるよう、丁寧に施術をしていきます。

アバットメント(連結部分)が折れる

長年のダメージの蓄積で、アバットメントが折れることもあります。

 

インプラント体の内部に入っているアバットメントの一部をしっかり取り除くことができれば、インプラント体を傷つけることなく、アバットメントのみの交換で修理が完了します。

 

しかし、インプラント体に残留したアバットメントが取り出せない場合は、インプラント体も含めて撤去し、再びインプラントを埋入する処置を行なうこともあります。

人工歯が破損する

人工歯は、患者様のご予算・ご要望に合わせて、さまざまな材質のものから選択可能です。天然歯とほとんど変わらない見た目であるセラミックが人気ですが、強度の面では少し注意が必要です。

 

セラミックの人工歯は、強い力がかかる箇所で欠けたり、割れたりすることがあります。人工歯が破損してしまった場合には、新しく人工歯をかぶせる処置を行ないます。

 

奥歯の破損であれば、「固いものを噛んでしまった」という原因以外に、歯ぎしりや食いしばりなどの癖が影響した可能性もあります。そのような癖や歯のすり減り方などを詳細に確認したうえで、マウスピースなどを使って歯への負担を軽減します。

 

なお、セラミックの弱点である強度を補える素材として、近年注目を集めているのが、ジルコニアです。当院でも、ジルコニアを含めたさまざまな素材の人工歯をご用意しております。

インプラントの寿命を延ばすコツ

 

インプラントの寿命を延ばすコツには、以下のようなものがあります。

  • インプラント治療前の検査をしっかり行なう
  • 丁寧なセルフケアでインプラント周囲炎を予防する
  • 定期的に適切なメンテナンスを受ける
  • 噛み合わせを改善し、歯に大きな負担をかけないようにする
  • 禁煙する、または喫煙量を減らす

それぞれ詳しく解説します。

インプラント治療前の検査をしっかり行なう

前述のとおり、口腔内の状態が悪いと、インプラント治療に悪影響が生じかねません。さらに、糖尿病・高血圧・心臓病・腎臓病といった全身疾患を抱えている方は、インプラント治療自体を断られるケースもあります。

 

インプラントを長持ちさせたいなら、インプラント治療に影響する疾患や癖がないか、事前に検査することが大切です。したがって、術後のアフターケアだけでなく、詳細な術前のカウンセリング・検査を実施してくれる歯科医院を選びましょう。

丁寧なセルフケアでインプラント周囲炎を予防する

インプラントは人工歯なので、虫歯にはなりません。しかし、日頃のケアを怠ると、口腔内で細菌が繁殖して、結果的にインプラント周囲炎を引き起こすこともあります。

 

天然歯周辺の歯茎で起こる歯周病と比較して、インプラント周囲炎は初期症状に気付きにくく進行しやすいため、注意が必要です。

 

インプラント周囲炎を予防するには、普段から丁寧に歯を磨くことが重要です。また、歯間ブラシやデンタルフロスを使用し、歯ブラシだけでは除去できない汚れにも対処しましょう。

定期的に適切なメンテナンスを受ける

定期的に歯科医院を受診して、口腔内のクリーニングを受けるのも有効です。セルフケアだけでは取り切れない汚れを徹底的に除去できるため、インプラント周囲炎はもちろん、歯周病や虫歯の予防にもつながります。

 

年に数回、定期検診・メンテナンスを受けることで、インプラントの寿命も延ばせるでしょう。

 

インプラント治療後のアフターケア (永久保証について・定期検診の重要性)

噛み合わせを改善し、歯に大きな負担をかけないようにする

歯の位置や歯茎の状態は、加齢とともに少しずつ変化するものです。したがって、治療直後は問題がなくても、後々違和感や不具合が生じる可能性もあります。

 

インプラントの寿命を延ばすには、定期的に検診を受けて噛み合わせを確認し、インプラントに負担がかからないようにすることが大切です。

 

歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合は、夜間のマウスピース使用などで対策するのが有効です。

禁煙する、または喫煙量を減らす

喫煙はインプラントと骨の結合を妨げ、口腔内の状態も悪化させるため、インプラント治療に悪影響を与える行為です。歯科医院によっては、喫煙者のインプラント治療自体を断るところもあります。

 

インプラント治療の成功率を高め、できるだけ長く使用したいなら、禁煙外来を受診するなどして禁煙、あるいは喫煙量の軽減に取り組みましょう。

インプラントの寿命がきた際の対処法

 

寿命がきたインプラントを使い続けていると、インプラントが抜け落ちて誤飲してしまう可能性があります。インプラント周辺の組織で痛みが生じたり、細菌感染でほかの歯や歯槽骨がダメージを負ったりするリスクも高まるため、注意が必要です。

 

また、問題を放置すると再治療が難しくなるケースもあるため、インプラントに違和感を覚えたら、早めの対処を心がけましょう。

 

「インプラントの寿命がきたかも……」と感じたら、以下のように対処してください。

  • 保証期間を確認する
  • 医師に相談する
  • 交換または再手術を行なう

それぞれ詳細を解説します。

まずは保証期間を確認する

術後のトラブルや寿命を想定し、大半のインプラント治療には、保証期間が設定されています。保証期間はインプラントのメーカーや歯科医院によって変動しますが、おおむね5~10年程度であるのが一般的です。

 

ただし、保証を適用するには、定期検診・メンテナンスを受けていることが前提条件になることが多いです。そのほか、以下のような条件が定められているケースもあるため、事前に保証の詳細を確認しておきましょう。

  • 特定のパーツ(人工歯・インプラント体など)のみを対象とする
  • 日常生活で発生した破損や脱落である
  • 医師の指示を守って禁煙している
  • 再治療費用の一部のみを負担する

保証期間や保証条件は、契約書などに記載されています。

医師に相談する

インプラントにグラつきなどの不具合が起こったり、何となく違和感を覚えたりする場合には、速やかに歯科医師に相談しましょう。引越しや閉院といった事情で、治療を受けた歯科医院に通院できない場合にも、決して放置はせず、別の歯科医院を受診しましょう。

 

「これくらいなら大丈夫」と安易な自己判断をすると、インプラントおよび口腔内の状態がさらに悪化するおそれもあるので、注意してください。

交換または再手術を行なう

インプラントのトラブルが発生したら、まずは「どのパーツで」「何が起こったのか」を把握する必要があります。

 

アバットメントや人工歯などインプラント体に影響のない範囲の破損であれば、パーツの交換や修理のみで処置できるため、比較的対処は簡単です。

 

一方、インプラント体の脱落などが発生した場合、もう一度インプラント体を骨に埋め込まなければなりません。つまり、再手術が必要です。

 

なお、手術は初回より2回目以降のほうが難化しやすい傾向にあります。

インプラントの再治療にかかる費用

インプラントの保証期間内であれば、再治療にかかる費用は原則無料です。ただし、保証の条件によっては一部の費用が自己負担になったり、支給金額に上限が定められていたりします。

 

一般的にインプラント1本当たりの交換費用は、おおむね30~60万円です。インプラント代や手術費用のほか、骨移植や組織再生などの追加費用が必要になってきます。

インプラント治療の歯科医院選びで確認すべきポイント

 

インプラント治療を受ける際には、以下に挙げたポイントを意識して、慎重に歯科医院を選ぶことが大切です。

  • 保証の有無と保証期間
  • 使用するインプラントのメーカー
  • 医師の実績や評価
  • 保証の有無と保証期間

各ポイントの概要や注意点を解説します。

保証の有無と保証期間

日常生活を送る過程でインプラントに不具合が起こる可能性もあるため、保証の有無は必ず確認しましょう。十分な保証を設けている歯科医院を選べば、インプラントの破損や脱落が起こった際の負担を軽減できます。

 

保証期間・保証条件は、メーカーや歯科医院によって異なるため、忘れずに確認してください。特に、保証期間は1日でも過ぎると適用対象から外れてしまうため、保証開始のタイミングと併せて把握しておきましょう。

 

また、保証条件も多岐にわたるため、細かい部分まで目を通しておく必要があります。保証が適用されるパーツや保証回数の上限、免責金額などは特に重要度が高いので、契約前の段階できちんと確認しましょう。

使用するインプラントのメーカー

インプラントのメーカーは世界中に数多くありますが、品質にはばらつきがあります。すべてのメーカーが高品質なインプラントを提供しているとは限らないため、本当に信頼できるメーカーを見極めることが大切です。

 

歯科医師からアドバイスを受けるのはもちろん、インターネットなどで情報収集を行なうことをおすすめします。それぞれの特徴や口コミをチェックしたうえで、慎重にメーカーを選びましょう。

医師の実績や評価

インプラント治療の実績が十分にあるかどうかも、歯科医院選びで重要なポイントです。ホームページや比較サイトを見て、インプラント治療の症例や対応件数、患者の口コミ評価などをチェックしましょう。

 

また、費用や治療期間について丁寧に説明してくれる専門医を選ぶことも大切です。

歯科医院の設備・環境

質の高いインプラント治療を受けるには、以下のように設備・環境が整った歯科医院を選ぶことも大切です。

  • 院内が清潔に保たれている
  • 手術室が整備されている
  • エックス線写真が見やすい

また、歯科用CTやマイクロスコープ、口腔内スキャナーといった機器が充実しているかどうかも重要なので、ホームページなどを確認しましょう。

 

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本町通りデンタルクリニックなら、無期限・無償の永久保証をお付けします

本町通りデンタルクリニックでは、インプラント手術を行なった患者さんへのアフターケアに積極的に取り組んでいます。当院では、上記でお伝えしたどのような術後トラブルでも、無期限・無償にて永久保証いたします。

 

「せっかく思い切って手術を決めたインプラントを、できるだけ長く、快適にお使いいただきたい」という気持ちで治療を行なっておりますので、どうぞお気軽に定期メンテナンスにお越しください。

 

※永久保証の条件である定期検診には、別途費用が発生します。

まとめ

インプラントは入れ歯やブリッジより寿命が長く、平均的に10~15年ほど使用可能です。実際にはそれ以上に長持ちするケースが多いですが、一方で、平均寿命より早く破損や脱落が起こる可能性もあります。

 

インプラントの寿命がきたら、保証の適用可否を確認し、速やかに医師に相談しましょう。また、日頃からメンテナンスやセルフケアを実践したり、噛み合わせを改善したりするなど、インプラントを長持ちさせるための取り組みも重要です。

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